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ちぎれる手足! もげる首! ひときわバイオレンスな作品が集う-『こわい本6 怪物』

『こわい本6 怪物』

楳図かずお/2021年/368ページ

孤独な破壊者か、 未来を創造する救世主か?

生命をコントロールすることに取り憑かれた博士が創り出した怪物――破壊と暴力に満ちた一夜を描く「恐怖人間」。海辺の村で出会った少年と幼い怪獣が友情を育む一方、村人たちの恐れが暴力となって噴出する「大怪獣ドラゴン」。女子中学生が好奇心から、手に負えない危険なものを呼び覚ましてしまう連作短篇「楳図かずおの呪い」他、「恐怖の首なし人間」を収録。人間の エゴや肥大化した欲望が生み出す様々な“怪物”を描く戦慄の 1 冊。

(Amazon解説文より)

 

 「恐怖人間」-フランケンシュタインの怪物さながらの、死体から作り上げられた人造人間が人間を惨殺してまわるというだけの話。頭を握り潰し、体を引き裂き、手足を引きちぎり、男も女も赤子も若者も老人も動物も、ただただ無惨に死んでいくという研ぎ澄まされたバイオレンス描写に痺れる。

 「恐怖の首なし人間」-「笑い仮面」にも登場した探偵五郎が主役のシリーズ第1作。ワニとライオンを合体させたワニオン、アヒルとコンドルから作ったアヒコンといった合成生物を作っている藻呂尾博士の研究所を訪れた少年探偵・五郎は、案の定というかなんというか博士のヤバい企みを知ってしまうのであった。合成獣たちも中盤に登場する首なし人間も見事な怪物っぷりである。

 「大怪獣ドラゴン」-ストレート過ぎる名前の怪獣ものだが、冒頭に「天文12年」とナレーションが入る。なんと室町時代の話である。少年が不思議な卵を拾って、中から産まれた怪物が急成長。恐れた村人たちに迫害される…というおなじみのストーリーも、舞台が室町時代なだけでけっこう新鮮な感じがする。後半は現代によみがえって破壊の限りと尽くすドラゴンと、かつての少年の子孫が邂逅し…という展開。

 「楳図かずおの呪い」-全3作の単発ストーリーもの。「第1話 ビデオカメラに何が写ったか?」-美しい少女・小川りまが転校してきてからというもの、まさみは怪物が「窓を開けろ!」と吠える恐ろしい夢を見るようになった。そして夜が明けると、まさみの首元には血を吸われたかのような傷がついている…。同級生の謀図に頼んでビデオカメラを自分の部屋に設置してもらったまさみは、毎夜何が起きているか確認しようとするのだが…。表紙にもなっている異形のデザインが素晴らしい。話はツッコミどころも多いがオチはなかなかである。「第2話 4の呪い」-先生たちが学校の安泰のため、いけにえを選ぶ集会を開いているところを見てしまったリコ。今年のいけにえが数字の「4」にまつわる生徒と知ったリコは、最近テストの調子がいいことに気づき、「今度の模擬テストで4位になると殺される!」と怯え始める…。強引なストーリーと強引極まりないオチに呆気に取られる珍作。「第3話 幽霊屋敷」-アホの女生徒たち4人が幽霊屋敷と噂される家にあがりこみ、当然ながら幽霊を見て逃げ出す。だが翌日になると、彼女らの身体の一部に傷跡が現れ…。ラストにはキレがあり悪くないのだが、3号に渡って長々と連載する内容でもない気はする。

 

 巻末企画ページの解説は伊藤順二。横尾忠則とのスペシャル対談の後編も載っている。

★★★☆(3.5)

 

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