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ビンゴが揃えば列の全員が死ぬ! ビンゴとホラーの合わせ技、だいたい滑る説-『ビンゴ』

『ビンゴ』

吉村達也/2005年/562ページ

東北の小さな高校で一人の女子生徒が首を吊った。黒板には、誰が書いたか席割りと同じ5×5のビンゴの図。その中央が彼女の席だった。森に響き渡る「リーチ!」「ビンゴ!」の声。そして、恐怖が始まった。

(Amazon解説文より)

 

 全国からの落ちこぼれが集まる希望の光学園で、25人のクラスメイトのうちの1人、綿引麻由が教室内で首を吊り自殺した。教室の席は5行×5列に並んでおり、麻由はちょうど真ん中の席だった。その日から、生徒たちのもとに謎の白い花が現れるようになる。そして白い花を受け取った生徒が縦・横・斜めに並ぶと、その列の全員が死んでしまうのだ! 響き渡る「リーチ!」「ビンゴ!」という不気味な女の声の正体は…。

 そして10年後。学園を卒業してからもビンゴの呪いは続き、生き残っている生徒はわずか6人だった。自殺した真由の恋人だった智史。クラス委員で優等生だったあずさ。「ハカセ」があだ名のメガネ君・卓。体重120kgの巨漢からシェイプアップした元太。関西弁の元気キャラ・万里恵。当時から札付きの不良だった大作。集まった彼らは呪いを遺した何者かを探し出すため、廃校となった希望の光学園に向かう…。

 

 強引な展開に終始振り回されるジェットコースター作品。ビンゴが揃うと死ぬ! というのが大きなウリなのだが、そのビンゴ自体がいまいちピンと来ない。白い花という死の予兆がなんとも地味であるし、いざビンゴが揃ってからも『ファイナル・デスティネーション』ばりの無茶苦茶なピタゴラスイッチ展開で4~5人がまとめて死ぬので笑ってしまう。スキー場のシーンなどはほぼコントだし、舞台が10年後に移ってからはもうビンゴ関係なく1人ずつ死んでいくのも適当である(少なくとも健四郎と夏恋は同じ列に居たほうがよかったのでは)。ビンゴが揃うと死ぬ、というアイデアのホラーとして山田悠介の「ビンゴ」という短編があるが、これも大変微妙なのでこの題材自体が鬼門なのではないか。そもそもビンゴがドキドキハラハラするのは「リーチがかかったのになかなかビンゴが揃わない焦燥感」とか「先に誰かがビンゴを揃えてしまうかもしれないという緊張感」があるからであって、要は対戦相手がいないとドキドキ感がないゲームなのである。

 なんでもアリ過ぎるB級さが拭えない作品だが、ラストの「バス停の2人」のシーンは美しいし、分厚さのわりにスイスイ読めてしまうので満足感はある。黒幕もかなり意外(かつ強引)な人物で、この辺はさすがベテラン吉村達也と言えよう。

★★★(3.0)

 

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