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今まで読んだあらゆる小説の中でもぶっちぎり! 少しは減速してくれ!-『ブレーキ』

『ブレーキ』

山田悠介/2008年/284ページ

―死ぬのか、俺は―!?生命をかけた熾烈な死の遊戯。生き残りたければ、勝つしかない!!ブレーキを踏むと囚われた幼なじみが処刑される。彼女を救うためには、時速100キロで走る車を操りながら、ブレーキを踏まずに20キロの死のコースを走りきらなければならない…。圧倒的な死の状況に強制的に巻き込まれた反逆者の運命は―!!絶体絶命究極の状況を5編収録。ノンストップ・サバイバル・ノヴェル。

(「BOOK」データベースより)

 

 正直、この作者は今まで読んだことがなく『リアル鬼ごっこ』の評判くらいでしか知らなかったのだが、まさかここまでとは思わなかった。凄すぎるの一言。

 デスゲーム小説5編からなる短編集だが、「デスゲームに参加させられる動機や理由が明らかにならない」、「デスゲームのルール自体が不明瞭」という欠点のどちらか、あるいは両方を抱えているものばかりで、そもそも根本的にゲーム自体がつまらないので手に汗握る場面が一切ない。巻頭作「ビンゴ」は、死刑囚が1から25までの番号を割り振られ、ビンゴが揃ったら死刑執行されるというお話。国がそんなことをする必然性、ある? 戦略性もなにもないただの運ゲーなので、看守がビンゴの番号が1つずつ読み上げる様子を延々と描き、特にアクシデントも起きず、最後は主人公が死刑になって終わり。「サッカー」はボールの代わりに相手チームの選手の首を剣で撥ねてゴールする、という競技。なんでそんなことするの? 「ババぬき」はババぬきで負けた家族を殺して山に埋める話。なんでそんなことするの?(3回目) ババぬき自体も運ゲーだし、まったく盛り上がらない。「ゴルフ」は大会に出場した主人公が「バーディー取らなきゃ会場を爆破するぞ」と謎の脅迫を受けるが、ふつうにバーディーでクリアし、脅迫者の正体はわかりませんでしたという話。なんでそんなことしたの? 「ブレーキ」は国から強いられた核ミサイルの研究を断った主人公が、自動でスピードを上げ続ける車に乗せられ。「ブレーキを踏むと捉えられている知り合いが毒ガスで死ぬが、ゴールまでたどり着けば助けてやるぞ」と言われる話。おそらく独裁国家だろうに、そんな回りくどいことする必要ある? どうなの?

 設定に最低限のリアリティも無く、かといって破天荒さを楽しませる勢いも無く、キャラクター造形も空虚な会話を含めて個性が無く、ゲーム自体を興味深いものにする構成力も無く、何ひとつとして評価できる点が見つからない。これまで読んできたありとあらゆる本の中でもトップ3に入る程の凄まじさだった。完敗だ。もう勘弁してくれ。

☆(0.5)

 

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