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プロファイリングが示すたった1つの矛盾。FBI帰りの心理分析官vs猟奇殺人犯-『心理分析官』

『心理分析官』

和田はつ子/1998年/301ページ

アメリカでFBI研修を終えようとしていた警視庁専属心理分析官・加山知子に至急帰国の命令が届く。捜査が難航する連続殺人事件のためだ。捜査権を与えられた知子は、妊婦を狙う残虐な手口の殺人犯を心理分析を駆使し追い詰める。犯人の闇の部分に光を当て女性心理分析官が事件の真実を明らかにするサイコ・サスペンス。

(「BOOK」データベースより)

 

 妊婦をターゲットにした連続猟奇殺人事件が発生、FBIで研修を受けていたプロファイラー・加山知子が警視総監の立花に呼び戻される。知子は日本に戻る前、同様の連続殺人事件が起きていたホノルルに足を伸ばす。事件を追っていた日本人教授・御所美津子は一連の事件は先住民を憎む先住民の秘密結社の仕業だと推理を述べた。

 日本に戻ってきた知子に対しての周囲の眼は冷たく、捜査一課の長谷川は露骨に彼女を敵視していた。かつて知子の恋人だった検死官の篠原、現在のパートナーである松井刑事といった協力者はいたが捜査は難航し、警察をあざ笑うかのように被害者は増えていく。マスコミは警視総監肝いりで事件に関わった知子へのバッシングを報じ始める始末。真犯人から自分に向けられた明確な悪意を感じ取った知子は、プロファイリングによりその正体を看破する。だがそのプロファイリングには、シンプルかつ決定的な矛盾が1つ残されていた。最後の手がかりを求めて沖縄へ向かう知子。だが真犯人はついに、知子に近しい人々へとその魔手を伸ばす…!

 

 猟奇殺人を扱った警察モノであると同時に、主人公である「心理分析官」・加山知子のパーソナリティにも深く関わった物語である。文章自体はかなり淡々としておりスピーディに進むのだが、一見そっけない描写の中にも彼女の人となりがしっかり見えてきて好印象である。真犯人の正体が割れてそこで終わりではなく、「追い詰めるまで」の過程が重視されているのはなかなか新鮮。お約束のラストもホラー味たっぷりである。ぶっちゃけあまりプロファイリングしていなかったような気もするが、サイコサスペンスものとしては普通に楽しめる。

★★★(3.0)

 

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