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袋とじで原作と異なる結末が明らかになる! 映画を観た方が早い気もするが…-『映画版 黒い家』

『映画版 黒い家』

原作:貴志祐介 脚本:大森寿美男/1999年/173ページ

生命保険制度と現代日本の抱える根源的な病理に迫った傑作サイコ・サスペンス『黒い家』を「39刑法第三十九条」でも森田芳光監督とコンビを組んだ気鋭の脚本家・大森寿美男がシナリオ化。日常は、たった一本の電話で身も凍る境地へと変貌した。袋とじの中でまったく新しい幕切れが訪れる。

(「BOOK」データベースより)

 

 1999年に公開された映画版のシナリオ。原作とのおもな違いは、舞台が京都から金沢を中心にした北陸になっていること、クライマックスで百万石まつりが開催されること、若槻がスイミングクラブに通っていたり幸子がボウリングに興じていたりするシーンがあること、等で省略された箇所を除けば原作小説と大きな違いは無い。「袋とじ(130ページ~159ページ)の中でまったく新しい幕切れが訪れる」とあるが、そこも大きな違いは「幸子が格闘中になぜか若槻を愛撫する」「幸子が持ってきたボウリングの玉で、幸子にとどめを刺す」「ラストシーンで若槻がボウリング場に行くと、幸子のボールがリターンから出てくる」くらいである。

 正直な話、脚本を読む時間があるなら映画を観ればいいし、もっと言えば原作小説も読めばいいと思うので、価値はあとがき部分くらいにしか無いように思う。映画公開時に開催されていた「クイズ 山崎まさよしを探せ!」の募集要項があるのはちょっと面白いが。『黒い家』映画版にエキストラ出演している山崎まさよしの役柄とセリフを応募すると賞品が当たる、というもの(正解は「出前持ち」)。

 映画版について言うなら、原作との変更点は「真犯人のモンスター性」を強調するためのものが多い。原作の根底にあった「理解しがたい価値観の人間が社会に増えていることへの恐怖」に関してはサラリと流されており、そこがちょっと不満ではある。

★★(2.0)

 

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