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よくあるタイプの末代まで祟る怨念話をテンポよく描くノベライズ。サクっと読めはするが…-『怪談』

『怪談』

行川渉(箸)、三遊亭円朝(原作)、奥寺佐渡子(脚本)/2007年/189ページ

放蕩三昧の藩士、深見新左衛門は、借金の督促に訪れた皆川宗悦を酒の勢いで斬り捨て、遺体を下総の累ケ淵へ沈めてしまう。やがて新左衛門は宗悦の怨念にとりつかれ、錯乱し妻を斬殺、深見家はお取り潰しとなる。―それから、二十五年後。芸が評判の富本の師匠・豊志賀と、生真面目な働きぶりの煙草売りの新吉は運命的に出会い、恋に落ちるが…。

(「BOOK」データベースより)

 

 三遊亭円朝の落語『真景累ヶ淵』を下敷きにした、中田秀夫監督の映画をノベライス。時は江戸、金貸しをしていた鍼医が武士に借金の催促をしたところ斬り殺されてしまい、亡骸は累が淵に沈められた。当然ながら鍼医の恨みは深く、武士とその妻が狂死。そして時は過ぎ、事件当時は赤子だった武士の息子・新吉も見目麗しい青年へと成長。浄瑠璃の師匠・豊志賀は新吉と出会い、自分よりもはるか年下の彼に恋するのだが、豊志賀はかの鍼医の娘であった―。

 新吉はとにかくモテモテであり、彼を巡って幾多の女性が登場するのだが、みな不幸な最期を遂げていく。これも鍼医の怨恨であり、当時赤子だった新吉に罪はないしなんとも理不尽。進吉本人も褒められない言動が少なくないが、怪奇現象で人間性デバフがかかっているわけだしただただ気の毒。原作映画は未視聴だが、少なくともこのノベライズでは昔ながらの怪談の域は出ていないように思える。非常にテンポよく読める(200ページ足らずの本なのに章が24もある)し、つまらないわけではないのだが。

★★☆(2.5)

 

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