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ぱらいそさいくだ! 阿部寛まんまの稗田礼二郎が登場する、映画版「生命の木」ノベライズ-『奇談』

『奇談』

行川渉(著)、諸星大二郎(原作)/2005年/155ページ

子供の頃に神隠しにあった大学院生・佐伯里美。しかし、彼女にはその頃の記憶がない。失われた記憶を求めて東北の「隠れキリシタンの里」を訪ねた彼女は、異端の考古学者・稗田礼二郎と出会う。十字架に磔にされた死体、神隠しから生還した少年、そして、村に伝わる聖書異伝の意味するものとは?すべてが解き明かされるとき、彼らは想像を絶する「奇蹟」を目撃する…。

(「BOOK」データベースより)

 

 諸星大二郎『妖怪ハンター』の一編、「生命の木」を原作にした映画のノベライズ。映画版では稗田礼二郎(あまりにも阿部寛すぎる)のパートナーとしてオリジナルの女主人公を登場させ、神隠しにあった子供たちというわりと余計な要素をプラス。それ以外は原作漫画の流れをほぼそのままなぞっているが、この『奇談』というまったく芯を食っていないタイトルはどうにかならなかったものか。

 ノベライズ版は可もなく不可もない内容で、終盤のダイナミックな歴史解釈など、面白い部分はすべて原作漫画にあった部分である。ただ、映画版で削られた要素(編集段階でカットされた可能性あり)もノベライズ版に入れられているのは好印象。適度なセリフ・状況説明の追加のおかげで話の流れはじゅうぶんわかりやすい。ノベライズではなく映画版自体の問題なのだが、やはり子供たちが神隠しにあった理由がまったく不明。未解決の謎を無駄に増やしただけになっている。あまり登場人物の多くない原作を、なんとか嵩増ししなければいけなかったのはわかるのだが。

★★★(3.0)

 

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