『バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ SIDE A』
牧野修/2007年/268ページ
黄道特急の中でゾンビと化した乗客に襲われるレベッカとビリー。洋館で命がけの戦いを下クリスとジル。それに続くラクーン市(シティ)の壊滅。これらの事件には、すべて巨大企業アンブレラ社が関わっていた。そして裏で暗躍する男アルバート・ウェスカー。生物をゾンビ化させるウィルスと、ウィルス全滅をかけた人類との知られざる戦いのすべてと謎が、今明かされる。カプコンが誇るニンテンドーWii専用ソフトゲームのノベライズ。
(裏表紙解説文より)
上の解説にある通り、Wiiのゲームソフト『バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ』のノベライズであって映画版とは無関係。このソフトは『バイオハザード0』~『バイオハザード4』までの出来事を各主人公でプレイでき、敵役のウェスカーの視点で描く隠しエピソードも含まれるというシリーズの集大成的なものなので、ゲーム『バイオハザード』についてぼんやりとした知識しか持っていない人でも『4』までのストーリーの流れを追えるようになっている。映画で活躍するキャラももちろん出てくるので、角川ホラー文庫の他の「バイオハザード」シリーズを読む際のサブテキストとしても悪くないだろう。
原作ゲームはいわゆるガンシューティングゲームで、次々と出てくるゾンビやクリーチャーをひたすら撃っていくというシンプルなもの。そのおかげで本作も次々と現れる敵をただただ倒していくというややワンパターンな展開になってしまっている。敵の数が多すぎると同時に、そいつらを蹴散らして進む主人公らが強すぎるので緊張感を欠く。もちろんウェスカーを含めいろいろなキャラの視点から1つの事件を描くなどの工夫はされているのだが、ゲームの展開に忠実なぶん、どうしても単調さは感じられてしまう。ただ「屋敷のあちこちに弾薬や手榴弾が隠されていることにツッコむ」「敵がいつも同じパターンで動くことへ言及する」などメタな小ネタもあり、著者がかなり元のゲームを研究していることはわかる。ホラー小説ではなく、あくまで「ゲームのノベライズ」として見るなら完璧に近い出来である。ちょっとウェスカーが神がかり過ぎている気もするが。
★★★(3.0)