角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

魔性の瞳が秘められた憎悪を暴く。全体的な説得力不足が惜しい一作-『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』

『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』

日向奈くらら/2017年/320ページ

二年C組の問題の多さには、呆れますね―教頭の言葉が突き刺さる。また私のクラスの生徒が行方不明になった。これでもう4人だ。私はその失踪にあの子が関係しているのではないかと恐れている。宮田知江。ある時から急に暗い目をするようになった女生徒だ。私は彼女の目が恐い。でもそんなことは、これから始まる惨劇に比べれば些細なこと。なぜなら私は、夜の教室で生徒24人が死ぬ光景を目にすることになるのだから…。

(「BOOK」データベースより)

 

 新任教師・北原奈保子が担任する、2年C組の生徒たちが一晩で24人死んだ(冒頭20ページほどでコレが起きるスピーディさ)。夜の教室に集まった彼らは自殺、あるいはお互いを殺し合う形で血みどろになりこと切れていた。死んだ24人以外の生徒は行方不明になっており、そのうち1人はクラスと部活でいじめを受けていた宮田知江で、残りは率先して彼女のいじめを行っていたメンバーだった。数日後、山の養鶏場で行方不明になった生徒たちの惨殺死体が発見される。だがその中に唯一、宮田友江の姿だけはなく…。

 人間の心の奥底に潜む「悪」を暴走させる“悪魔の目”の持ち主が復讐を果たすという物語だが、ではその「悪」とは何なのか? という掘り下げが浅く、説得力が足りない印象を受ける。担任の北原は無能の一言、事件を追う野々村刑事はサディストのうえラストの行動は完全にトチ狂っており、いまいち作中人物の心情に寄り添えない。本来なら野々村と真犯人の逃避行は、その関係性や背後を考えれば非常に倒錯した異形の美しささえ感じるものになるべきはずなのだが、残念ながらあまり活きていないのである(ついでに言うと全体的に言葉の誤用や不自然な言い回しも多い)。目指したかった場所はわかるものの、力不足を感じる惜しい作品。

★★☆(2.5)

 

◆Amazonで『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』を見る(リンク)◆

www.amazon.co.jp