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濃密なストーリー展開を読みやすく仕上げた、しっかりと怖面白いホラーミステリ-『ミノタウルス』

『ミノタウルス』

ささやななえこ/2001年/348ページ

殺人・行方不明者が相次ぐ名門ロスター家。調査に赴いたカードとジョーカーを見つめるロスター婦人の視線、仮面の男の視線―。表題作他「サラの遺言」「霊送りの島」収録。心の奥底を震わせる恐怖コミック傑作集!

(裏表紙解説文より)

 

 軟派なチンピラ男・カード、彼の相棒で霊感持ちのジョーカー、悪徳弁護士のオードソンの3人が、いわくありげな洋館や古城が舞台のオカルトな事件に巻き込まれる「サラの遺言」「ミノタウルス」、風変わりな埋葬の風習が残る「国根島」を訪れた一家と、とある目的のため島を訪れた青年が恐るべき真実を目の当たりにする「霊送(たまおくり)の島」を収録している。

 「サラの遺言」、「ミノタウルス」は海外ミステリの雰囲気に心霊ホラーを持ち込んだ2編。主役のカード&ジョーカーのコンビがとにかく陽性で、彼らが軽いギャグを交えつつ話を進めてくれるおかげで濃密なストーリー展開が胃にもたれない。

 「霊送の島」はなかなかの力作。ストーンヘンジのような遺跡や横穴墓群が遺る国根島。単身赴任で働く父親の元へやって来た沙織は、遺跡を調べている大学生・河原と出会う。2人で島を巡るうちに、奇怪な風習が次々と明らかになる。この島では埋葬する人の首や足を折らねばならぬこと、山には「オンバラ様」と呼ばれるサルが棲んでいること、埋葬されている人の死因が病死と事故死しかないこと…。そして沙織の母親が何者かによって攫われる。沙織もまた、海から這い上がってきた男に足首を掴まれ…。ゾンビものかと思わせておいて、もう一捻りを加えた展開が怖面白く、伝奇ホラーとして素晴らしい出来。

★★★☆(3.5)

 

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