『水域(アクエリアス) -転校生3-』
森真沙子/1999年/301ページ
かつて無数の死体が流れ着く異界の地であった下町・深川。歴史研究部に属し、深川に魅せられる咲子の周囲で、女生徒たちが次々に不可解な自殺を遂げる。事件を追う咲子は、送り主不明のCD‐ROMが自殺の共通点であるらしいことを突き止めたのだが…。梅雨前線が空を厚く覆う頃、徐々に雨足強まる深川に、冷たい恐怖が降臨する。シリーズ最高の書き下ろし傑作長編。
(「BOOK」データベースより)
シリーズ3作目だが、主人公が1作目と同じ有本咲子というだけで過去作と直接のつながりは無いので、本作から読んでも問題なく楽しめる。前作『真夜中の時間割』の衝撃的なラストがまったく関わってこないのはちょっと物足りなくもあるが。本作の咲子はまっとうな探偵役である。
隠されたメッセージを聴くと自殺してしまうCD-ROM…という、学園ホラーではよくあるタイプの伝染する呪いモノである。次々に出る犠牲者、怪しい動きを見せる幾人もの容疑者、パッと見は頼りない探偵、団結する生徒たち…という青春ミステリのお約束が丁寧に展開されており、過去シリーズ作でも見られた生徒たちの瑞々しい姿にはノスタルジックな気分をくすぐられてしまう。生徒も教師も、戯画的になり過ぎない範囲で個性的な人物ばかりで好感が持てる。
ラストの解明部分はやや駆け足気味で語られていない部分も多く、もっと濃密に描いてほしかった気もする。前作までの短編のようなシャープさは控えめだが、深川という町に潜む水怪に生徒と教師が一団となって立ち向かう終盤の展開は長編ならではの盛り上げ方だろう。「学園」という舞台の魅力は存分に発揮されているので、前作までの雰囲気が好みだった人なら特に楽しめるはず。
★★★(3.0)