角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

★★

新顔の妖怪たちが続々登場、すっかり日常モノの小話に-『幽落町おばけ駄菓子屋 夕涼みの蝉時雨』

『幽落町おばけ駄菓子屋 夕涼みの蝉時雨』 蒼月海里/2016年/208ページ 大学生の御城彼方は、あの世とこの世の境界に存在する幽落町に下宿し、駄菓子屋“水無月堂”の店主で大家でもある水脈さんとアヤカシたちの憂いを解決する日々。ある日、駄菓子屋の用心…

贖罪のため善行を積む黒づくめ医師&元人間の鬼コンビの余話がイイ感じ-『幽落町おばけ駄菓子屋 晴天に舞う鯉のぼり』

『幽落町おばけ駄菓子屋 晴天に舞う鯉のぼり』 蒼月海里/2016年/202ページ 御城彼方は、大学2年生になった。生身の人間ながら、人ならざるものが住む常世の町「幽落町」に下宿して、2年目の春。のんびりキャンパスを歩いていたら、突然ハーレーに乗った都…

連続殺人をワインで強引解決! ソムリエ向け(?)非ホラーミステリ-『悪魔のワイン』

『悪魔のワイン』 和田はつ子/2006年/215ページ 第一の殺人現場には、血痕がついたブドウ畑の絵葉書が遺されていた。第二の殺人は、毒入りワインによるものだった。そして第三の殺人では、被害者の頭部が切断され、ワインで煮込まれていた。次々に起きる連…

謎解き部分は少々無理があるが、新解釈されたアヤカシたちが魅力的なシリーズ-『幽落町おばけ駄菓子屋 思い出めぐりの幻灯機』

『幽落町おばけ駄菓子屋 思い出めぐりの幻灯機』 蒼月海里/2014年/205ページ 東京の有楽町と間違えて、おばけの町―幽落町に引っ越した僕・御城彼方。生身の人間なのに“あの世”と“この世”の中間の不安定な存在として、この町で1年間暮らさなければならなく…

妖怪が棲む町を舞台に、心温まる謎解き物語。スレたホラー読者にはヌルいかも-『幽落町おばけ駄菓子屋』

『幽落町おばけ駄菓子屋』 蒼月海里/2014年/205ページ このたび晴れて大学生となり、独り暮らしを始めることになった僕―御城彼方が紹介された物件は、東京都狭間区幽落町の古いアパートだった。地図に載らないそこは、妖怪が跋扈し幽霊がさまよう不思議な…

ストーリーが凡庸なためノベライズ化しても面白みがイマイチ。シリーズの停滞期-『ソウ5 ―SAW5』

『ソウ5 ―SAW5』 行川渉(著)、パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン(原案)/2008年/237ページ 九死に一生を得て助かったFBI捜査官ストラムは、傷一つ負わずにゲームからサヴァイバルしてきたホフマン刑事こそジグソウの後継者ではないかと疑う。しか…

他人の家庭事情から垣間見える漆黒。小説2編は傑作だが、コミック7編の印象がイマイチ薄め『ワイドショー』

『ワイドショー 内田春菊ホラー傑作選』 内田春菊/2004年/236ページ 気がつくと、ワイドショーを見ていないのは私だけだった。「なんで見ないの?」と訝しがられるがそれって、そんなに変なことなの?遊びに行った恋人の家にも、ワイドショーを見る母親が。…

強引極まりないデスゲーム。壮大なオチとゲーム内容との釣り合いが…-『放課後デッド×アライブ』

『放課後デッド×アライブ』 藤ダリオ/2012年/320ページ 「あなたたちはアセンションされました。これから、命をかけたゲームをやってもらいます」クラスで忘年会をしていた高校3年生の啓太たちは、突然不気味な仮面の人物によって体育館に監禁される。ここ…

映画にもない描写や脚本家自らの解説など、資料としては貴重な一冊-『映画版脚本集 リング リング2』

『映画版脚本集 リング リング2』 原作:鈴木光司、脚本:高橋洋/1999年/301ページ ちまたに頻発する原因不明の突然死。呪いが込められたビデオテープの存在は都市の人々の間に急速に広まって…。映画「リング」とその最悪の続編として、さらなる恐怖をフィ…

よくあるタイプの末代まで祟る怨念話をテンポよく描くノベライズ。サクっと読めはするが…-『怪談』

『怪談』 行川渉(箸)、三遊亭円朝(原作)、奥寺佐渡子(脚本)/2007年/189ページ 放蕩三昧の藩士、深見新左衛門は、借金の督促に訪れた皆川宗悦を酒の勢いで斬り捨て、遺体を下総の累ケ淵へ沈めてしまう。やがて新左衛門は宗悦の怨念にとりつかれ、錯乱…

異常世界で異常人物が異常言動を繰り広げ、怪談どころじゃなくなってるホラーコメディ-『怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花』

『怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花』 黒史郎/2014年/342ページ 超ド級の怖がり・大神澪は、事情により七不思議ならぬ“二十一の怪談”がある白首第四高校に入学してしまった。友達も作らず怪談を避ける日々を過ごしていたが、突然、破天荒な不良・雲…

掲載誌がやや変わり種の未収録作品12編。読み応えある解説が13編目?-『13の幻視鏡』

『13の幻視鏡』 吉村達也/2013年/211ページ 純子が体験した“血の凍るような恐怖”。それが起こったのは、深夜のタクシー乗り場だった。残業後、ひとりタクシーを待っていると背後から…(「HEY!TAXI!」)、ヨセミテ国立公園の断崖から身を投げようと決意した城…

世紀末予言がことごとく大ハズれしたことを知った身で読むと味わい深い一冊-『千年世紀末の大予言』

『千年世紀末の大予言』 桐生操/1996年/224ページ ヨハネやノストラダムスなど、数多の大予言者たちが説いてきた“世界の終末”は、なぜか偶然のごとく、今世紀末に集中している。偉大な大予言者たちは、もう何百年も前から、この千年世紀末に訪れるであろう…

怪事件の犯人は、正体不明の物の怪だった! …で終わる仰天ミステリ-『血ぬられた鏡像』

『赤かぶ検事奮戦記 血ぬられた鏡像』 和久峻三/1993年/177ページ 赤かぶ検事の相棒ともいうべき行天燎子警部補が、殺人事件の容疑者として取調べを受けた。彼女に瓜二つの制服姿の婦警が、若い女性を残虐に殺害したのだ。身に覚えのない彼女は赤かぶ検事…

よくある悪霊モノかと思いきや、正体不明の大いなる禁忌が黒幕。面白いのはそこだけ-『オトシモノ』

『オトシモノ』 福澤徹三/2006年/198ページ 駅でオトシモノの定期券を拾った人々が、次々と行方不明になる事件が発生した。戻ってきた彼らは、見るも恐ろしい異形の姿になっているという。大人たちが固く口を閉ざす中、ヤエコという名の女性の霊が関係して…

お手本のようにシンプルなデスゲーム。それ以上でもそれ以下でもなし-『出口なし』

『出口なし』 藤ダリオ/2010年/304ページ 完全な密室に拉致された男女5人。机の上には1台のPC。残された酸素は12時間。制限時間までにマスターから出題されるクイズに答え、ゲームに勝ってここから脱出せよ。間違えれば即刻死が待っている―!不条理な極限状…

赤い字で「ひとり」と書いた紙を現場に残す、連続殺人犯の目的とは…!?(特に意味無かった)-『ひとり』

『ひとり』 新津きよみ/2009年/253ページ 中学2年の夏、桃子は親友のすみれとバス旅行をしていた。ところがそのバスが事故を起こし、ふたりは崖下に転落してしまう。大怪我をしたすみれとともに救助を待った桃子だが、すみれは「わたしの分まで生きてね」…

フリーのホラゲみたいな展開が続く、あまりにライトな学校の七不思議ホラー-『七怪忌』

『七怪忌』 最東対地/2021年/256ページ ラノベ作家を目指す高校2年生の慶太は、美少女の転校生がなぜか七不思議を調べている現場に遭遇。自身も動画チャンネルを持つ従兄と一緒に夜の学校に忍び込むが、それは想像を絶する悪夢の始まりだった。 (Amazon解…

消せない過去を届けに来る郵便屋。ラストの鬼気迫る展開は見ものだが、全体的にはごく平凡な因縁話-『郵便屋』

『郵便屋』 芹澤準/1994年/238ページ 結婚をひかえ、平凡な幸福を満喫していた萩尾和人の前に、ある日突然現れた不吉な影―今日もまたあの郵便屋が、忘れていた忌しい過去を配達にやってくる。住所も宛名もない不気味な封筒を、古ぼけた配達鞄にしのばせて……

ライバルの悪役令嬢がいちばんイキイキしてるラブコメ伝奇譚-『帝都月光伝 Phantom of the Moon』

『帝都月光伝 Phantom of the Moon』 司月透/2013年/285ページ 魑魅魍魎の跋扈する帝都・東京。主演に抜擢された女優が次々に行方不明および死亡するという、いわくつきの舞台『宵の歌姫』の上演が決まった。この不吉な作品の裏に“堕ちた月の民”の関与を感…

淡々と起きる怪異、爆速で恋仲になる前田敦子と成宮寛貴…ファスト映画小説の極み-『クロユリ団地』

『クロユリ団地』 脚本:加藤淳也・三宅隆太、ノベライズ:堀江純子/2013年/197ページ 介護福祉士を目指す二宮明日香は、引っ越してきたばかりのクロユリ団地でミノル少年と出会う。その晩、隣室からのノイズに苛立った明日香は、学校でクロユリ団地の悪い…

なんちゃって帝都を舞台に、美男美女とからくりメイドが魔物退治。記者ならちゃんと取材して!-『帝都月光伝 Memory of the Clock』

『帝都月光伝 Memory of the Clock』 司月透/2011年/278ページ 魑魅魍魎の跋扈する帝都・東京。自ら命を絶った男が死後、幽鬼となって、横恋慕した女のもとを夜な夜な訪れ、ついには何処かへ攫ってゆく―…らしい。そんな謎の「神隠し事件」を追う弱小出版社…

作者の他作品キャラが乱入し大活躍してしまう百合ホラー。原作ゲームほぼ関係なし!-『零 女の子だけがかかる呪い』

『零(ゼロ) 女の子だけがかかる呪い』 大塚英志/2014年/284ページ 美しいアヤ。森鴎外訳『ハムレット』の中の詩「オフィーリアの歌」を読む彼女に、誰もが恋をした。そう、ミチも。そんなアヤがある日、姿を消した。女生徒たちは、消えた彼女に導かれるよ…

ホラー映画から出てきた美少女が、冴えない大学生と幽霊退治-『ハサミ少女と追想フィルム』

『ハサミ少女と追想フィルム』 佐島佑/2014年/323ページ 美術大学に入学した内気な男子、道郎は、おかしな先輩・桧垣に誘われてホラー映画を作ることに。桧垣に渡されたホラー映画を見ていると、なんと画面から、大ハサミを持った少女が飛び出してきた!カ…

「フルコース」「女」「ホラー」の三題噺を微妙に持て余している短編集-『フルコースな女たち』

『フルコースな女たち』 新津きよみ/2015年/268ページ 小学校教師の水川には給食で食べられなくなった物がある。それはうずらの卵。その理由には、彼女の母親のある「奇行」にまつわる、強烈なストレスが関係していて…(「転落―食前酒」)。智恵子、敦子、真…

主人公の二重人格設定を人物紹介ページで明かす潔さ。登場人物全員クズ! 勝手に戦え!-『私の友達7人の中に、殺人鬼がいます。』

『私の友達7人の中に、殺人鬼がいます。』 日向奈くらら/2020年/256ページ 某県の山麓に集まった少年少女7人。彼らには差出人不明のメールが届いていた。山に登れば、1年前の死の真相がわかるという。7人の脳裏にあの日の悪夢が甦る。仲良しの8人で、受験…

夜までに家に帰れなければ死ぬ! という設定自体がガバガバ。ツッコミどころが多すぎて集中できない-『夜までに帰宅』

『夜までに帰宅』 二宮敦人/2012年/256ページ エネルギー戦略の失敗から、日本では19年前に「夜」制度が導入された。節電のため夜間は電力の供給が完全に途絶え、外出は禁止。通信・警察・医療機関も全停止する。親に内緒で、冒険気分で「夜」の吉祥寺に出…