『ハサミ少女と追想フィルム』
佐島佑/2014年/323ページ
美術大学に入学した内気な男子、道郎は、おかしな先輩・桧垣に誘われてホラー映画を作ることに。桧垣に渡されたホラー映画を見ていると、なんと画面から、大ハサミを持った少女が飛び出してきた!カルミンと名乗る少女につきまとわれるようになった道郎は、この世のものではない存在“ハザマ”が見えるようになり…。映画作りに奔走しながら、ハザマが起こす不思議な事件をカルミンと解き明かしてゆく、青春ホラーミステリ!
(「BOOK」データベースより)
上記のあらすじで全てが言い尽くされている。ごくごく平凡なありきたりの主人公・道郎、自称殺人鬼のカタコト系金髪少女・カルミン、飄々としているが映画作りへの意気込みは真剣な先輩・檜垣、後輩に怪しげなバイトを紹介するスキンヘッドの美人先輩(普段はウィッグ着用)・星野、わりと普通目のヒロイン・速水と、登場人物はそれなりにキャラが立っており、彼らの軽妙なやり取りは面白い。ただ、いくら続刊前提とは言え話が一段落すらしておらず、そもそもカルミンがなぜハザマと現世を断ち切る能力を持っているのか等、重要な設定がまるで語られないのでモヤモヤ感が残る。ここは早いうちに解決しておくべき大前提だと思うのだが。
楽しく読めはするものの、ハザマの起こす事件がどうもライト過ぎるというか、「ホラー映画から美少女が出てきた」以外にホラー要素が皆無なのは物足りない。角川ホラー文庫には大学が舞台のオカルトミステリ『ホーンテッド・キャンパス』シリーズがすでにあるわけだし、どうしても比較してしまう。
★★☆(2.5)