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狂った教師が楽しいキャンプを地獄のサバイバル訓練に変える…!-『ブレア・ウィッチ・ファイル 水底の幽霊/血の悪夢』

『ブレア・ウィッチ・ファイル 水底の幽霊/血の悪夢』

ケイド・メリル/2001年/297ページ

一八二五年に川で溺死した十歳の少女アイリーンの事件は、バーキッツヴィルではブレア・ウィッチ伝説の一部であると噂されていた。調査を進めるケイドのもとに一通のメールが届いた。学校のキャンプを引率した女子高生セシリアがアイリーンの幽霊を目撃し、このキャンプでボーイフレンドを亡くしたという告白だった。戦慄のサバイバルゲームと化したキャンプの残酷な結末を綴った「水底の幽霊」他、映画『ブレアウィッチ2』の恐怖を増幅させる、オリジナル小説第二弾!

(裏表紙解説文より)

 

 ブレア・ウィッチ伝説のひとつ、「アイリーン・トリークル事件」。1825年、タビー・イースト・クリークの小川で、アイリーンという少女が溺死した。その小川は子供が溺れるような深さではなく、目撃者は「骨ばった白い手が、アイリーンをつかんで引きずり込んだ」と語っている。遺体は発見されず、黒い油にまみれた小枝が13日間に渡って川に流れついたという…。

 

 「水底の幽霊」-セシリアとボーイフレンドのマークは、下級生30人の指導員として、5泊6日のキャンプに参加することになった。場所はタビー・イースト・クリーク近辺。学校の人気者・モリス先生が同行し、下級生たちも大はしゃぎ。楽しいキャンプになるはずだった――。だが、アスレチック中にマークが足を滑らせて川に転落。溺れかけた彼を助けるため、モリス先生が川に飛び込む。ふたりは無事陸地に戻るが、その後の様子が一変。マークはいつもの陽気さが鳴りをひそめ、暗い顔つきでセシリアを拒絶するようになる。モリス先生はキャンプの予定を変更し、超スパルタのサバイバル講習を始める。いったい彼らに何が起きたのか。困惑するセシリアは、下級生ルーカスの「アイリーンがここに来たんだ」というつぶやきに不吉な気配を感じとる…。

 友だち(≒犠牲者)が欲しい、寂しがり屋な少女の幽霊…という、ブレア・ウィッチ伝説の中では比較的わかりやすい怪異譚。「楽しいキャンプが、イカれた教師の蛮行で地獄に変わる」という展開も秀逸で、これだけでホラー映画が1本撮れそうである(というか、もっと壮絶な地獄絵図にしてほしかったくらい)。終盤、教師たちが行方不明になり、自力で脱出を試みる生徒たちが、マークによって凍りついた湖の上に誘導されるシーンは非常にスリリング。前巻『暗室』もそうだったが、「最悪の予感」を醸し出すシチュエーションづくりが実に巧い。

 

 「血の悪夢」-父を亡くし、天涯孤独となった17歳のフランクは、おんぼろトラックを運転して伯母の家へ向かう途中、「ブレア」という町に迷い込む。まるでゴーストタウンのようなその町には、幽霊のような少女、フットボール選手、スポーツ少女、斧を持った男という奇妙な人々がうろついていた。ほどなくして目を覚ましたフランクは、それが夢だったことに気づく。しかし転校先のエルダースバーグ高校で、夢とそっくりな少女と出会う…。

 ブレア・ウィッチの怪異との対決がはっきり描かれる、珍しいエピソード。フランクはネイティヴ・アメリカンの血を引いており、精霊たちと通じる手段を持つ。また、彼と共に“夢の町”ブレアを追う少女・リリスは、ブレアに潜む“夢の女”によって妹を殺された過去を持つ。フランクを助けるため、そして妹の仇を討つために、リリスは独学の白魔術で怪異に対抗しようとする。往年のモダンホラーのような味わいだが、大仰さは抑えられており、チープなオカルトバトルには陥っていない。

 

 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』シリーズは1作目の映画のことくらいしか知らなかったのだが、なかなか楽しめた。正直、モキュメンタリーという仕掛けがそれほど効いているわけではないが、ホラーでしか味わえない厭な緊張感に満ちたシーンも多く悪くない。『ブレア・ウィッチ・ファイル』シリーズはこのほか「死のカード」「プリズナー」「ナイト・シフター」「執着」の4編があるが、いずれも未訳である。

★★★(3.0)

 

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