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轢かれた元カレを無視してデートに向かう、酷い主人公が酷い目にあう酷い話-『今日の別れに』

『今日の別れに』

赤川次郎/2003年/255ページ

押しに弱く、彼氏の坂西と別れられず困っていた歩美。今日こそはと坂西に会いに行く途中で、憧れの先輩・南田からデートの誘いの電話が入った。有頂天になった歩美がその勢いで坂西を強く拒むと、傷ついた坂西は車の前に飛び出しはねられてしまう。南田とのデートの時間が迫っていた歩美は罪悪感を覚えながらも坂西を見捨て立ち去るが、そのことが思わぬ形で歩美の人生を歪めていく…。表題作他2編収録。

(「BOOK」データベースより)

 

 「角に建った家」-夢見がちな15歳、加賀幹夫の家の近くにいつの間にか立派なお屋敷が建っていた。その外観は、幹夫が読んでいた「眠っている屋敷」という小説に出てくる屋敷と瓜二つ。不思議に思った幹夫が屋敷を訪れると、小説のヒロインとそっくりの少女が出迎えてくれた。幹夫の幼馴染の畑中由紀子は、屋敷に入り浸りになる幹夫のことを心配するが…。ジュニアノベルのようなさわやかな読み心地のファンタジー。もとは岩波書店から出版されていた単行本で、司修がイラストを担当していたらしい。
 「あなた」-田舎町にホテルを建設する実業家。彼はこの町で育ったのだが、郵便局員の女をだまして大金を持ってこさせ、金を持ったまま女を置いて逃げてしまったという過去を持っていた。罪深き思い出の“現場”である吊り橋を訪れた実業家は、あの日、自分が騙した女とそっくりの少女と出会う…。やっていることがムチャクチャ極まりない男に3代に渡って振り回される悲しき女性の話であり、「大変ですね」という感想しか出てこない。定価200円で売られていた角川mini文庫収録の一編。
 「今日の別れに」-憧れの南田先輩にデートに誘われて浮かれ気分の歩美。それまでなんとなく付き合っていた坂西に「もう会うのはこれで最後にしましょ」と告げるが、絶望した坂西は猛スピードで走る車の前に飛び出し跳ねられてしまう。さすがに青ざめる歩美だったが、南田との約束の時間が迫っていたため、虫の息で救急車に運ばれる坂西から逃げるようにしてその場を去るのだった。ヤバすぎる。この後、坂西の葬式でひと悶着あったり、南田との結婚式で悲劇が起きたりしてしっかりとヒドい目にあう歩美であった。

 

 各作品のテイストがチグハグ過ぎて寄せ集め感が拭えないが、表題作の理不尽すぎる悲劇のつるべ打ちは意地悪く愉しめる。ホラー文庫ではない角川文庫版は、本書に加筆修正したものとのこと。

★★☆(2.5)

 

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