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物語のごとく人の心を操る「BABEL」の目的は? 一部キャラのウザさは相変わらず-『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book3《肖像》』

『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book3《肖像》』

阿泉来堂/2024年/336ページ

発売後即重版の注目の「バベルの古書」シリーズ、待望の第3巻!

高校時代からの親友が行方不明になり、独自に行方を探そうとする道警捜査一課捜査支援分析室所属の刑事、天野伶佳。そんな中、札幌市で殺人事件が発生する。被害者は『死に顔を描いた不気味な肖像画』の通りに殺害されており、第一発見者である被害者の友人は、現場から立ち去っていく犯人らしき人物を目撃していた。その人物は、かつての友人に酷似していたのだが、数十年前と変わらぬ若々しい容姿だったという。それはオスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』を彷彿とさせる奇妙な事件だった。この事件の捜査を伶佳が担当。加地谷と浅羽の二人は無理やり招集され、プロファイリング担当の伽耶乃も加えた四人で再び捜査をすることに。ところが捜査中、伶佳が何者かに監禁されてしまう。はたしてそこにいたのは――。そして伶佳を救出のため駆け付けた加地谷たちが見たのは、またもや『BABEL』の刻印が押された古書だった。ノンストップビブリオミステリーホラーの第3弾!

(Amazon解説文より)

 

 今回、猟奇事件のモチーフとなるのは「ドリアン・グレイの肖像」。無数の切り傷がつけられた肖像画と、同じように切り刻まれた遺体が並べて放置される猟奇殺人事件が発生。事件現場の周囲では20年前に失踪したはずの男が、当時のままの姿で目撃されていた。これはまるで、肖像画に描かれたままに若さを保ち続けたという「ドリアン・グレイの肖像」の物ではないか…。過去に「小説をモチーフにした猟奇事件」を解決してきた加地谷悟朗・浅羽賢介の両刑事は、以前知り合った天野伶佳刑事、プロファイラーの御陵伽耶乃とともに調査を開始する。だが、事件と並行して行方不明になった幼馴染・楠真理子を捜索していた伶佳は何者かに拉致されてしまう。伶佳の過去を知る拉致犯の正体は? そして偏執的な肖像画殺人を繰り返す犯人の目的とは…。

 

 シリーズものではあるが本作から読み始めても問題のない構成である。謎が謎を呼ぶ入れ子構造、地道な調査とプロファイリングが結びついて犯人像を暴き出す展開の王道ぶりは安定の匠の技。古書の物語によって人心を操る「BABEL」もその存在を少しずつ明らかにしてきており、ヒキとしてはなかなか強い。壮大かつ強大、かつ常人の理解に及ばぬ位置にいるであろう黒幕の正体が見え隠れしており、事件が解決してなお先が気になる展開である。

 ただ、キャラクターノベルなのに肝心のキャラがうざったいという弱点については前2作より悪化している(このシリーズに関しては毎回同じことを書いている気がする)。女好きで余計なことを言っては股間を蹴り上げられる麻羽、ボクっ娘で性格に難はあるが最強天才プロファイラーという伽耶乃のキャラ造形は昭和、あるいはせいぜい平成1ケタの解像度であり、これが別に『CITY HUNTER』辺りのキャラであれば違和感がないのだが、グロテスクな遺体とオカルト要素が跋扈する猟奇犯罪モノではたいへんにノイズである。その辺が気になる読者はもう振り落とされていると思うが。

★★★(3.0)

 

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