『失われた少女』
赤川次郎/1997年/355ページ
雪に埋もれた別荘で、ひとり静かに暮らす作家伊波伸二。彼の所に、見知らぬ少女が倒れ込んできた…。それと同じ頃、近くの空家では血痕が発見され、村上・小池両警部が捜査に乗り出していた。実は小池の妻は、以前、伊波と特別な関係が…。次々と殺人を犯かす雪男の正体は?やがて、事件に巻き込まれていく中で、少女は伊波を愛するようになっていった…。白銀の世界で起こる殺人ミステリー。
(「BOOK」データベースより)
かつて妻の殺害容疑をかけられて以来、マスコミに嫌気が差していた作家の伊波伸二は、人里離れた山奥の別荘でひっそりと暮らしていた。ある雪の夜、伊波は別荘の前で倒れていた記憶喪失の少女を保護する。スキャンダルを避けたい伊波は、警察に届け出ないまま、しばらく彼女を別荘に置いておくことに決めた。
その頃、伊波の別荘近くの空き家で、パトロール中の巡査が大量の血痕を発見する。「県警の名物」こと村上警部が空き家を調査したところ、部屋には若い女性のものと思われる衣服が揃っていたが、トイレも生理用品も見当たらず、生活感はまったく感じられなかった。周辺で聞き込みを進める中、村上は協力的過ぎる伊波の態度に不自然さを覚える。「女を匿っているのでは?」と推理した村上は、血痕が見つかった別荘の以前の持ち主・柴田徳子や、かつて伊波の愛人であり、現在は警視庁捜査一課の小池警部の妻・律子に接触し、調査を続けるが、決定的な証拠は見つからない。
やがて、別荘地では不審な出来事が相次ぐようになる。殺人を繰り返す怪力の大男の出現。柴田徳子の夫の自殺。伊波のもとから姿を消した少女。そして、すべての事件の鍵を握る、ある人物が伊波の別荘へと向かっていた…。
計算され尽くした読みやすさ、圧倒的リーダビリティは流石の赤川次郎だが、いわゆるホラーミステリを期待してはいけない。正体の知れない謎めいた少女、「雪男」と噂される怪力の殺人鬼(雪男というより、フランケンシュタインの怪物に近い)などが登場するが、超自然要素のない純粋なサスペンス作品である。謎解きの要素もほぼ無い。ラストまでは最高にスリリングな展開なのだが、真相を知るとやや物足りなさを感じるかもしれない。
話の鍵となる「少女」はいろんな意味で都合のいい存在であり、透明というか空っぽに近いキャラとして描かれている。昼行燈の冴えない外見ながら鋭い推理で真相に迫る村上警部をはじめ、その他の主要人物は人間味もあり印象的。
★★★(3.0)

