『サイレントヒル』
ポーラ・エッジウッド(著)、牧野修(編訳)/2006年/267ページ
白い灰に包まれたゴーストタウン、サイレントヒル。娘シャロンを原因不明の夢遊症から救うためにこの町を訪れたローズは、見るもおぞましい儀式の犠牲者に遭遇する。迫りくる地獄の闇から、無事に娘を助け出すことはできるのか?三十年前に街を襲った惨劇の真相が今、明かされる。美しい映像と世界観で人気を博す大ヒットゲームの映画化に、ノベライズの名手が挑む、傑作ホラー。
(「BOOK」データベースより)
ローズの娘、シャロンは9歳の誕生日を迎えてからというもの、壮絶な悪夢を見ては悲鳴をあげる夜が続いていた。夫のクリスはシャロンを入院させるべきだと主張するが、ローズはそれに反対。「“サイレントヒル”に帰らなきゃ」という娘の絶叫を聞いたローズは、その町が実際に存在することを知り、クリスに知らせることなく、シャロンを連れてサイレントヒルへと向かう。
1974年に炭鉱で大火災が起きて以降、サイレントヒルは地面から有毒ガスが噴き出す危険な場所と化していた。住民に見捨てられ、ただ静かに灰が降り積もるだけの死に絶えた町…。クリスが必死に妻と娘の足取りを追う中、ローズは霧に覆われたサイレントヒルでシャロンと離れ離れになってしまう。どこからか響くサイレンの音。周囲を侵食する深い闇。シャロンとそっくりの少女の影。おぞましく不気味なクリーチャー。異界と化したサイレントヒルで女性警官のシビルと合流したローズは、彼女と共に町を探索する。異界には指導者・クリスタベラのもとで共同生活を送る人々が残っていた。彼らはなぜサイレントヒルに残っているのか。 そしてサイレントヒルへ向かおうとするクリスを制止する、グッチ警部が知る真実とは…。
有名ホラーゲームを原作にした映画『サイレントヒル』のノベライズ。一部の登場人物の名前や設定はゲームと同じだが、ストーリー自体は映画オリジナルの展開となっている。『サイレントヒル』の魅力は悪夢のごときクリーチャーの造形や背景美術によるところも大きいのだが、正直なところノベライズではビジュアルの強みを100%引き出せているとは言い難い。三角頭やバブルヘッドナースはやっぱ絵で見てこそである。小説ならではの表現や独自の改変部分があるわけでもなく、忠実なだけの「ただのノベライズ」でしかない印象。とは言え、映画自体の出来がよかったおかげか話はそれなりに面白く、ゲームの雰囲気も出ている。暗鬱なエンディングも「ホラー」としては完璧だ。
上記の解説文には「ノベライズの名手が挑む」などと書かれている。牧野修は確かにノベライズの名手と言っていいと思うが、今回はあくまで編訳である。著者のポーラ・エッジウッドなる人物、まったくの無名なのだが何者だろう。
★★★(3.0)

