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大失敗映画をつまらなさも含めて忠実にノベライズ。何をどう怖がればいいのやら-『劇場霊』

『劇場霊』

脚本:加藤淳也・三宅隆太、ノベライズ:堀江純子/2015年/177ページ

気鋭の演出家・錦野の新作舞台は、若さを保つため少女の生き血を浴びたという実在した女貴族エリザベートの生涯。舞台にはその内面を映し出す分身として人形が用意されるが、稽古開始早々に主役の葵が事故で降板してしまう。代役に抜擢された沙羅は、稽古中に人形が動き出すのを目撃するが誰も信じない。閉ざされた深夜の劇場で、若手女優たちを襲うのは…。恐怖映画の名手・中田秀夫監督の最恐密室ホラーをノベライズ!

(「BOOK」データベースより)

 

 いまいちパッとしない女優・沙羅が受けたオーディションは、血の伯爵夫人ことエリザベート・バートリが主役の舞台だった(厭な劇だね)。演出家の思い付きでエリザベートと同時に等身大の人形を出すことになり、人形の頭部はその辺のアンティークショップで見つけてきたものを使うことにしたが、その頭部が呪われていたのでウギャーというお話。プロットの強引さに思わず脱力する。呪われた人形の攻撃手段は「キスをして相手を蝋人形化する」というもので、ショッキングさの欠片も見当たらない。オチは出演者ほぼ全員死んだけど生き残った沙羅は女優として大成してヨカッタネというものだが、普通そんな惨劇が起きたら生存者が真っ先に疑われるんじゃないだろうか。

 原作は『クロユリ団地』と同じく中田秀夫監督作品。同監督の傑作『女優霊』を彷彿とさせるタイトルだが、その足元にも及ばない出来である。そんな映画を忠実にノベライズして面白くなるわけもなく。原作が悪いとしか言いようがない。

★☆(1.5)

 

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