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淡々と起きる怪異、爆速で恋仲になる前田敦子と成宮寛貴…ファスト映画小説の極み-『クロユリ団地』

『クロユリ団地』

脚本:加藤淳也・三宅隆太、ノベライズ:堀江純子/2013年/197ページ

介護福祉士を目指す二宮明日香は、引っ越してきたばかりのクロユリ団地でミノル少年と出会う。その晩、隣室からのノイズに苛立った明日香は、学校でクロユリ団地の悪い噂を聞いた後、隣室で老人の死体を発見する。止まないノイズに怯える明日香は、老人の遺品整理にやってきた清掃会社の社員・笹原を頼り落ち着きを取り戻すが、家族がいるはずの家からは一切の形跡が消えていた―。恐怖映画の巨匠・中田秀夫監督の戦慄ホラーを完全ノベライズ。

(「BOOK」データベースより)

 

 映画版のストーリーをかなり忠実になぞっているノベライズ。大きく違うのはとある人物の末路くらいで、エンディングも含め大筋はほぼ映画と変わらない。

 両親、幼い弟とともに団地に引っ越してきた明日香(演:前田敦子)は、失礼な隣人、生意気なガキ、朝5時半に聴こえてくる隣人の目覚ましといった洗礼を立て続けに受けて意気消沈。しかも隣の独居老人はいつの間にか孤独死していた。落胆する明日香は特殊清掃員の笹原(演:成宮寛貴)になぜか好意を抱き、2人の中は急接近。明日香はガキの幽霊に取り憑かれたので、笹原は知り合いのスーパー霊媒に頼むのであった。

 映画を2倍速で観ているかのようにテンポよく読める反面、描写は非常に淡々としたもの。唐突に出てくる笹原、唐突に出てくる霊媒など、展開がとにかく急すぎて怖がるヒマも無い。ラスト、団地の一室に立てこもる明日香と笹原をおびき出そうとする悪霊の取った手が「親しい人の声マネをして扉を開けさせようとする」という何ひとつ新鮮味の無いモノで、これがクライマックスなだけに大変脱力する。中盤のどんでん返し、何の救いも無いラストはそれなりに印象的なものの、それだけである。ポップコーン並に軽く、腹に残らない一品。

★★(2.0)

 

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