『帝都月光伝 Memory of the Clock』
司月透/2011年/278ページ
魑魅魍魎の跋扈する帝都・東京。自ら命を絶った男が死後、幽鬼となって、横恋慕した女のもとを夜な夜な訪れ、ついには何処かへ攫ってゆく―…らしい。そんな謎の「神隠し事件」を追う弱小出版社の編集記者・御山さくらは、ある日、同僚の代理で作家・祀月令徒の原稿を受け取りに、彼の邸宅へと向かう。ところがそこでさくらを出迎えたのは、月光のような白銀の髪と、夜闇に似た紫紺の瞳をした、美しい少女姿の自動人形で…。
(「BOOK」データベースより)
主人公は出版社の女記者。彼女が原稿を取りに行く作家先生は伊達眼鏡のイケメンで、美しい妹と機械人形のメイドと共に豪邸に住んでいる。実は彼らはかぐや姫伝説にまつわる月の神を信仰する一族で、メイドの正体は月の神そのもの。同じく月から降りてきた魔を発見すると、メイドは依り代である妹ちゃんの肉体を借りてパワーアップ! 悪い奴らをやっつけちゃうぞ! という話。
序盤、主人公のさくらが帝都にはびこる神隠し事件を調査する中、作家の屋敷へ訪れたところ怪しい美青年や美少女がモリモリ出てきて、さて彼らの正体は? と興味を惹かれたところで、上記の設定を長々と解説されるためテンションが下がる。その後も作者しか盛り上がっていないバトルシーンが延々続き、いくらキャラ紹介を手短に済まさなければならないシリーズものの1巻目とはいえ、この中盤辺りの展開はあまりにいただけない。中盤以降、神隠し事件の真相が明らかになる辺りの展開は面白いだけに惜しい。それにしても主人公、記者なのにぜんぜん取材しているシーンが無い。こんなに美味しい特ダネに囲まれて過ごしてるのに、もっと貪欲になってほしい。
★★(2.0)