『怪談狩り 四季異聞録』
中山市朗/2017年/320ページ
「怖い怪談は、夏だけのものではない」と断言する怪異蒐集家・中山市朗が、四季折々の行事や情景を織り交ぜながら綴る怪談集。毎年3月3日の朝に天井からバサリと落ちてくる異様なモノ、真夏のキャンプ場に佇む赤いコートの女、幼い兄弟の前に出現したサンタさんの意外な貌、大晦日前日の夜に神社で行われる奇妙なアルバイト…。家族の団樂や友人との思い出に、じわじわ浸食してくる怪異に戦慄する。書き下ろし2篇を収録。
(「BOOK」データベースより)
冬、春、夏、秋と来て最後にまた冬と、季節の怪談が68話収められている。やはり夏の話が怖いのかなと思いきやそんなことはなく、本書ではむしろ夏の話がいちばんおとなしい。
ゴシック服を着た異形というビジュアルの強さがインパクト大な「怖がらないわけ」(冬)、ストレートな因縁話「タカシの引っ越し」(春)、泣き叫ぶ子供の姿があまりに悲痛な「怖い、怖い」(春)、さすが本場は怪異のスケールが違うと妙に納得する「富士の樹海」(秋)、わずか8文字が圧倒的に怖い「妙なマンション」(秋)、幽霊の告げるカウントダウンが恐怖の結末を呼ぶ「十五日に行きます」(秋)、超短編ながらこれぞ都市伝説といった趣の「気になるあの子」(冬)と、シリーズ屈指のエグい話が揃っている。オススメ。
★★★☆(3.5)