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山の牧場、犬鳴峠、三本足のサリーちゃん…最恐都市伝説に体当たり取材!-『新耳袋殴り込み 第二夜』

『新耳袋殴り込み 第二夜』

ギンティ小林/2013年/341ページ

傑作実話怪談集『新耳袋』で語られた怪異の現場で霊を挑発、本当に“出る”か試してみようという恐るべき突撃ルポの第2弾。今回訪れるのは、火だるまになって殺された人の霊で有名な九州最恐スポット「犬鳴峠」。そのトンネルでのギンティ小林が出会った恐怖の体験。そしてカメラが写したものとは!?他に謎の都市伝説「三本足のサリーちゃん」、霊が跋扈する「S高校の噂」など、恐怖に満ちた迫真のドキュメント!!

(「BOOK」データベースより)

 

 オカルト的に知名度の高いスポットが続々出てきて、前作以上に楽しい第2巻。関西・四国・九州へと突撃取材を敢行、その取材成果は映画『怪談新耳袋 殴り込み!』で観ることができる。

 本書も映画も、おじさんたちが怯えて騒いでぶっ倒れる様が見どころという唯一無二(?)の作風で、「登場人物の怖がりっぷりを一歩引いた目で観賞できる」というホラーの楽しみ方をとことんまで突き詰めた貴重なシリーズと言えるかもしれない。

【映画リンク↓】

映画「怪談新耳袋 殴り込み!」【TBSオンデマンド】

 

 第一章では前作『新耳袋殴り込み』の後日談にあたる実話怪談が語られるほか、霊感のある映画秘宝編集部バイト・市川力夫が「殴り込みGメン」新メンバーとして参加。さっそく第二章では幽霊が跋扈するという力夫の母校に押しかけ、案の定不審者扱いされるギンティたち。
 第三章はギンティの地元では有名だったという怪人物「三本足のサリーちゃん」を追う。『魔法使いサリー』のお面を被り、セーラー服を着て松葉杖で歩き、声はどう聴いても男性…というとにかく強烈なビジュアルで、漫画家の清野とおるも遭遇したことがあるらしい。果たしてその正体は何者なのか? サリーちゃんが目撃された商店街で聞き込みを開始するも、「可哀想な人なんだから掘り返すな!」的なことを言われてしまうのであった。正直、確かに大っぴらに触れてはいけないような雰囲気がプンプンするものの、都市伝説の生まれる源流を見ているようで興味深い。
 第四章・関西心霊ツアーでは前作で訪れた幽霊マンションにリベンジするほか、触ると祟られるという夫婦岩(通称オメコ岩)の割れ目に入り込んでいろいろ大変な状況に。第五章では『新耳袋』の著者・中山市朗を加えてかの「山の牧場」を訪れる一行。これがまた興味深いルポで、ところどころに見える生活感の跡に「ああ、ちゃんと人が住んでいたんだな」と安心する一方で、人の住み家としてはあまりに違和感の大きいその構造の不気味さがかえって増してしまう。第六章では日本最恐の心霊スポット・九州の犬鳴峠(犬鳴トンネル)に突入、過去最大級の大騒ぎに発展。この第四章~第六章のくだりは上記の映画『怪談新耳袋 殴り込み!』に収録されている。うえやま洋介犬(今じゃすっかりツイッターの人)の数珠に関するエピソードなどは映像で見るとなかなか不気味だった。山の牧場の「これ普通の牧場じゃね?」と「やっぱ普通じゃなくね?」の間をウロウロする雰囲気も良い。

★★★☆(3.5)

 

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