『新耳袋殴り込み 第三夜』
ギンティ小林／2014年／333ページ
凄まじいパワーを持つ霊が出現する東京・大田区の「幽霊ゲームセンター」、関東最恐の心霊ゾーン「Y霊園」、“出る”ので有名な「Oホテル」で百物語会を開催、関西でもっともヤバい「大阪I山トンネル」、呪われた廃墟「K観光ホテル跡」…。体を張って霊を挑発する命知らずの男・ギンティ小林が、またもや怪異の現場に敢然と殴り込み。そしてついに、幽霊の手形と動画を撮った!さらに、今だからこそ語られる驚愕の事実とは…!?
(｢BOOK｣データベースより)
映画『怪談新耳袋 殴り込み!2』の撮影が決定、今度は｢人の姿をした霊を映像に収める」というミッションが課せられる。だったら心霊スポットを巡るだけでなく、霊を挑発して怒らせればきっとカメラに映るはず！ というバチあたり極まりない理論のもと、再結集した殴り込みＧメンが暴走開始！ ギンティの筆もノリまくり、笑いと恐怖に満ちた1冊。
【映画リンク↓】
第一章では蒲田駅近くの幽霊ゲームセンターに突撃、イタズラ好きの騒霊｢さっちゃん｣の撮影にチャレンジ。深夜のゲームセンターが予想以上に怖すぎたため｢誰が撮影しに行くか｣でさっそく醜いなすりつけ合いが行われる。第二章では座敷童が出ることで有名な岩手のR旅館で一泊したのち、『遠野物語』にまつわるスポットを取材。ついでに地元のヤンキーからの情報で｢恩徳の化物屋敷｣へ向かう。なぜかヤンキーは心霊スポットに異様に詳しい。第三章は『新耳袋 第七夜』に収録された｢滑女｣｢渡女｣｢一本腕｣の舞台となったホテルで、中山市朗を迎えて百物語を敢行。第四話では千葉の八柱霊園でまたもやヤンキーと遭遇しつつソロ撮影。関東最大の心霊ゾーンの取材だったのだが、いまいちピンと来ない結果に終わってしまう。
が、続く第五章はスゴかった！ 『新耳袋 第五夜』収録の｢庭｣の舞台、すなわち愛犬家連続殺人事件の犯人・関根元の猟奇殺人現場ツアーを｢映画秘宝｣でもおなじみ柳下毅一郎、ロマン優光ともに敢行するのだが、同行する｢愛犬家連続殺人事件研究家｣・ようちゃんこのあまりのエキセントリックさにすべてがかき消されてしまう。あの事件の犯人・被害者のプロフィールと動向とセリフを全部覚えているのはヤバ過ぎる。あまりの逸材の登場に殴り込みGメンのテンションもエスカレート、死体解体・遺棄現場となった通称・ポッポハウスでオリジナルの“関根元音頭”を披露する始末。
第六章は大阪の幽霊トンネルへ行き、自転車に乗って女幽霊をナンパするという過去最大のバチあたり行為にチャレンジ、またもやヤンキーと遭遇しつつもオリジナルにデコレートした改造自転車で真夜中のトンネルへ。いい歳した大人が泣いてしまうほどの恐怖がバカどもを襲う！ 第七章では『新耳袋殴り込み 第一夜』でも訪れた関西の廃ホテルに再チャレンジ。ここなら幽霊の姿もラクラク撮れるに違いない！ ヤケクソになった連中が数々の冒涜行為の果てに迎える衝撃のラストとは。ボーナストラックでは幽霊ゲームセンターの｢さっちゃん｣にまつわる後日談を収録している。
訪れるスポットのバラエティ豊かさ、ゲスト陣の濃さ、殴り込みGメンの悪ノリぶりはシリーズ最強。こんなに笑える角川ホラー文庫は久しぶりだった。
★★★★（4.0）
