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ストレートな怖さでブン殴ってくるパワー型実話怪談。連作も単発も抜かりなしのクオリティ-『拝み屋怪談 怪談始末』

『拝み屋怪談 怪談始末』

郷内心瞳/2018年/288ページ

―「拝んで」始末した怪異を、怪談として「仕立てる」。戸の隙間からこちらを覗く痩せこけた女。怪しげな霊能者に傾倒した家族の末路。著者につきまとう謎の少女。毎年お盆に名前を呼ぶ声…。東北は宮城県の山中で拝み屋を営む著者が見聞きした鮮烈な怪異に、自身の体験談をも含む奇奇怪怪な話の数々。第5回『幽』怪談実話コンテスト大賞受賞者による、“拝み屋怪談”シリーズの原点にして極め付きの戦慄怪談!

(「BOOK」データベースより)

 

 角川ホラー文庫の『拝み屋怪談』としては6冊目だが、シリーズとしては実質1冊目にあたる。本書の基になった『拝み屋郷内 怪談始末』 (MF文庫ダ・ヴィンチ)とは収録作品が微妙に異なるので、コンプリート気質の方はそちらも併せて読んでみてもいいだろう。

 本シリーズは「拝み屋」といういっぷう変わった職に就く作者による怪談供養を集めたもの。もはやお馴染みの実話怪談ネタだが、正統派でストレートに殴り掛かってくる怪異である。普通に、素直に怖い話が多い。こうまでパワー型の実話怪談は逆に新鮮である。

 本書の中心となるのは、妄想から生まれた少女がたびたび現れて作者を悩ます「桐島加奈江」、依頼人から無理矢理押し付けられた石がきっかけで世にも奇妙な熱病にうなされる「奇跡の石」以下の連作になるのだろうが、「いいよね」「覗き目」のような洒落怖パターン、「一枚の写真」「見回り」のような正統派怪談、「猫爆発」のような理不尽系も個人的には好きである。ベストかつ厭なのは「誘導 陽」の救いのない結末。それにしても「桐島加奈江」が本シリーズの根幹にかかわる超重要キャラになろうとは、この時の読者はまだ思いもよらなかったのではないか。

★★★★(4.0)

 

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