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「一番怖いのは人間」パターンを実話怪談でやってしまった焦土作戦。新境地には違いない-『忌談2』

『忌談2』

福澤徹三/2014年/191ページ

夜な夜なマンションの上の部屋から聞こえる電車の音の正体は(「電車の音」)。就活に悩む女子大生が遭遇した恐怖の体験(「最終面接」)。新米ホストが店からあてがわれた寮の部屋は、なぜか2DKだった(「過去のある部屋」)。新規に開店したスナックで怪異が頻発する(「まちびと」)。ギャンブル好きのふたりが若いカップルを恐喝した結果(「オロク」)。読後感最悪、夜読むと必ず後悔する、本当にあった嫌な話シリーズ第2弾!

(「BOOK」データベースより)

 

 厭な話をひたすら集めた実話忌談集第2談。前書きで作者が「『ネタ切れか』というレビューもあったが、まさしくそうである」「地味な話を描くたびに『ぬるい』と評される」「超自然的な恐怖は、悲しいかな現実の恐怖に太刀打ちできない」などと書いているのにいろいろと思うところがある。

 実際、本書で怖いのは超自然要素と関係ない話の方が多い。ラストを飾る「オロク」はその筆頭で、ヤクザの組長の息子にうっかり手を出してしまった男性が語る最悪の一夜。超常現象ぽい展開がなくもないが、ヤクザの暴威のほうがよっぽど怖い。海外で犯罪に巻き込まれてしまった人々の恐怖体験「空港で落としたもの」「約束」もシャレにならない内容。ひょっとしたら自分はとんでもない罪を犯してしまったのでは? という不安をえぐる「未必の事故」はある意味新鮮。自分が加害者になってしまうことへの恐怖、実話ベースのホラーでこそ、もっと語られるべきテーマではないか。

★★★☆(3.5)

 

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