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異常世界で異常人物が異常言動を繰り広げ、怪談どころじゃなくなってるホラーコメディ-『怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花』

『怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花』

黒史郎/2014年/342ページ

超ド級の怖がり・大神澪は、事情により七不思議ならぬ“二十一の怪談”がある白首第四高校に入学してしまった。友達も作らず怪談を避ける日々を過ごしていたが、突然、破天荒な不良・雲英の脅しより、「怪談撲滅委員会」――害悪な怪談の殲滅を目指す組織の一員となることに。早速、“あかいちゃんちゃんこ”が出ると噂のトイレに連れていかれ……!? 超怖がり少女と不良青年が学校の怪談を“口撃”する、前代未聞の学園ホラー!

(「BOOK」データベースより)

 

 上のあらすじや表紙を見ると、「ああ、平凡な少女がオカルト研究会みたいなのに入れられる学園ホラーね」と思うのだが、実際に読んでみると「思ってたのと違う」感がすごい。まず本作の舞台は、怪談が人口に膾炙し過ぎた世界である。怪談は日本の重要な文化であり、ジャパンと言えばサムライ・スシ・テンプラ・オイワサン。小学校の授業では国語算数理科社会怪談、町おこしにも怪談ゆるキャラが大人気、さらに怪談作家なるものも登場し、実話怪談と称して創作を載せる始末である。

 ヘンなのは世界観だけではない。主人公・澪を「怪談撲滅委員会」に導くのが不良じみた男・雲英(キラ)だが、こいつは俺様キャラを越えた単なる異常者。澪も澪で言動にまったく女子高生らしさがないのに加え、恐怖を感じると髪の毛が急速に伸びてしまう(秒速0.5ミリ)という特異体質の持ち主。幽霊に出会ったりするたびに髪の毛がボサボサに伸びるので常にハサミを常備しており、リュックに切った髪の毛をパンパンに詰めて持ち帰ったりしている。

 要は異常な舞台設定のもと、異常な主人公たちが異常なやり取りをしているという『ボボボーボ・ボーボボ』とあまり変わらないスタンスなので、このノリについていけるかどうかである。帯に「爆笑ホラー」と書かれるような作品であることを念頭に置いてから読んでほしい。そういうモノと割り切ってしまえば、霊を退治するのではなく(なぜなら霊なんてものは存在しないから、という建前)、有害な怪談を怖くないモノに変えてしまう新感覚のゴーストバスターズものとして楽しめるだろう。個人的には30年前のパロディ同人誌みたいなノリはやはり少々鼻につくが…。ちなみに『幽霊詐欺師ミチヲ』シリーズとは同一の世界観らしく、雲英はとあるキャラの親族とおぼしき描写があるし、『ミチヲ』で活躍したあいつ(たぶん同キャラ)も登場する。

★★☆(2.5)

 

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