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赤い字で「ひとり」と書いた紙を現場に残す、連続殺人犯の目的とは…!?(特に意味無かった)-『ひとり』

『ひとり』

新津きよみ/2009年/253ページ

中学2年の夏、桃子は親友のすみれとバス旅行をしていた。ところがそのバスが事故を起こし、ふたりは崖下に転落してしまう。大怪我をしたすみれとともに救助を待った桃子だが、すみれは「わたしの分まで生きてね」と言い残して桃子の目の前で息を引き取った。その日以来、桃子は「すみれが自分の中で生きているような」不思議な経験をしながら成長した―。生と死で別たれても続くふたりの友情を描く、長編ホラー小説。

(「BOOK」データベースより)

 

 タイトルの『ひとり』は、「主人公の中にもうひとりの友人が…」の「ひとり」、いわゆるおひとり様(独身)を指す「ひとり」、孤独そのものを意味する「ひとり」、様々な意味が込められているのだが、あらすじにあるような「主人公の中にいる死んだ友人」の話は物語の筋にはほとんど絡まない。ラストに思い出したように出てくるだけで、ホラーの要素は薄い。

 ひとり暮らしの女性を狙う連続殺人。被害者の傍らには赤いマジックで「ひとり」と書かれた紙が落ちていた…というのが話の本筋なのだが、真犯人の動機はどうにも安っぽい怨恨で、主人公の周囲で起きる偶然も都合のいいものばかりで、週刊誌の信頼性の薄いゴシップ記事を読んでいるような気分になる。ラスト、主人公と真犯人がロシアンルーレットで対決する箇所の強引ぶりには脱力してしまう。

 読みやすい文体、リアルな主人公の内面描写など見るべきところはあるが、どうも全体的に話が取っ散らかってしまっている印象を受ける。犯人が「ひとり」と書いた紙を現場に残した理由は「意味は自分でもよくわからない」とのこと。なんだそりゃ。

★★(2.0)

 

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