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消せない過去を届けに来る郵便屋。ラストの鬼気迫る展開は見ものだが、全体的にはごく平凡な因縁話-『郵便屋』

『郵便屋』

芹澤準/1994年/238ページ

結婚をひかえ、平凡な幸福を満喫していた萩尾和人の前に、ある日突然現れた不吉な影―今日もまたあの郵便屋が、忘れていた忌しい過去を配達にやってくる。住所も宛名もない不気味な封筒を、古ぼけた配達鞄にしのばせて…。日常を蝕む超自然的な恐怖を丹念に描き切った、正統派ホラーの力作。第1回日本ホラー小説大賞佳作作品。

(「BOOK」データベースより)

 

 学生時代にいじめが原因で同級生を自殺させていた和人。そんなことは忘れて大人になり、就職して結婚も間近に控え幸せに暮らしていたが、ある日何も書かれていない真っ白な封筒が彼の元へ届く。中にはただ「ひとごろし」と記された紙が…。顔面蒼白になる和人は、学生時代にいじめに加担していた連中が次々と不審死を遂げていることを知る。まさか、あの時死んだあいつが生きていたというのか。和人の前にたびたび現れる、腐った淀んだ眼をした郵便屋…。手紙のほかに汚れた学生服、血まみれのカッターナイフ、腐った給食なども届き始め、和人はますます追い詰められていく。

 中盤で和人の周囲の人間が、すぐ側に立っている郵便屋に気づかない…という一幕があるが、郵便屋が超自然の存在だと明らかになってしまうと、かえって不気味さが薄れてしまう印象を受けた(それはそれとして「さっさと警察に相談すりゃいいのでは」とも思う)。クライマックスに向けて和人がどんどん壊れていく展開は盛り上がるが、全体的に見れば想定内の展開しか起きず、ややパンチに欠けた出来。本作は日本ホラー小説大賞の第1回佳作作品であり、確かに新人が書いた小説としては悪くないクオリティなのだが…。

★★☆(2.5)

 

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