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掲載誌がやや変わり種の未収録作品12編。読み応えある解説が13編目?-『13の幻視鏡』

『13の幻視鏡』

吉村達也/2013年/211ページ

純子が体験した“血の凍るような恐怖”。それが起こったのは、深夜のタクシー乗り場だった。残業後、ひとりタクシーを待っていると背後から…(「HEY!TAXI!」)、ヨセミテ国立公園の断崖から身を投げようと決意した城島は、意外なものに遭遇し…(「グレイシャー・ポイント・ホテル」)など、これまで書籍化されていなかった幻の12作を1冊に収録。奇妙な世界に迷い込んでしまった人々を描く、ファン必読の貴重な作品集。

(「BOOK」データベースより)

 

 角川ホラー文庫では30冊以上を刊行している常連作家、吉村達也の没後に編まれた単行本未収録作品集。オフコースのファンクラブ会報誌に連載されていた小説「幻視鏡」7編、長編『ついてくる』の元になった、明治生命のPR誌連載の「京都」テーマ短編3編、同PR誌の世界遺産ミステリ2編、計12の短編を収録している。タイトルが『13の幻視鏡』なのに12編…? という疑問に関しては、著者の担当編集者が記した解説文に答えがある。様々な裏話も語られているこの解説はなかなか読みごたえがあり、実質的に13編目と言っていいかもしれない。
 あまりドギつい内容のものは無く、物足りない印象は拭えないが、それでも「幻視鏡」の7編のうち「危険なふたり」「YES, WE'RE OPEN」「晩秋のクラヴィア」はわりとしっかりしたホラー。なぜオフコースの会報に載っていたのか不思議になるほど。「グレイシャー・ポイント・ホテル」はヨセミテ公園、「レイク・クレセントの風」はシアトルのオリンピック公園を舞台にした短編で、これはもう単なる「いい話」である。トータルで見ればやはりちょっと軽めで、熱心なファン向けの1冊といった印象だ。

★★☆(2.5)

 

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