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遊び半分のお見合いに鉄槌を! 黒幕の理解しがたい行動に困惑させられる珍作-『お見合い』

『お見合い』

吉村達也/2001年/262ページ

大好きな史也と結婚する前に、一度だけ「お見合い」というものをしてみたい。満たされた恋で幸せな毎日を送る滝真由子にとって、それは余裕の気持ちが産み出したほんの遊び心。恋人の史也も、笑って賛成してくれた。そして真由子は、親戚からきた見合いの話に、ふざけ半分で応じることにした。だが、お見合い相手の男は真剣だった。真由子の魅力に一目惚れをした彼は、思いつめた表情でこう言った。「私はガムテープ男です。一度くっついたら離れません」。

(「BOOK」データベースより)

 

 角川ホラー文庫でもひときわ多作な吉村達也先生は、読者の予想を裏切る展開にもひときわ長けているのだが、予想を裏切ることに専念し過ぎて明後日の方向に行ってしまった作品もいくつか見られる。本作もハンドルの切り替えが急すぎて、インド人が右へ寄ってしまったような怪作スレスレの一冊である。

 

 長年交際してきた史也との結婚を前に、ブサイクな男と適当な見合いをしてそれをネタにしようと考えた真由子。だが、紹介された見合い相手・森中は美形で高身長で気配りのできるエリート青年だった。自分は以前から彼の名前を知っていたような気がした真由子は「もしや透視能力?」と興味を惹かれて見合いすることにするが、すっかり森中に心を奪われてしまう。
 お見合いの顛末を知った傷心の史也は実家に帰り、父親にうじうじと相談するが、その過程で森中についてのとんでもない事実が発覚。急いで真由子の元へ戻ろうとする史也(なぜか父親も同行)。そのころ、真由子は森中の別荘へとドライブ中だったが、森中は次第に異常な言動をとりはじめ…。

 

 いわゆるストーカーものかと思いきや、意外な一捻りで驚かせてくれる一品。驚きはするが、いくらなんでもとある人物の異常っぷりがぶっ飛び過ぎている。真由子が森中の別荘へと連れ込まれ、黒幕の正体も明らかになってサァー大変! となるエピローグ前の章はたいへん面白いのだが、これはすべてを力業で持っていく強引、かつ予測不能なビックリ展開によるものが大きい。そう、まるで『ジュラシック・パーク・ザ・ライド』のように…。本当にあの黒幕、どこからあんなモチベーション湧いて出てきてるんですかね。

★★☆(2.5)

 

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