『鏡地獄 江戸川乱歩怪奇幻想傑作選』
江戸川乱歩/1997年/405ページ
少年時代から、鏡やレンズ、ガラスに異常な嗜好を持ち、それが高じてついには自宅の庭にガラス工場まで作ってしまった男がたどった運命は…。表題作「鏡地獄」他、傑作中の傑作、代表作中の代表作ばかりを集めた、現代ホラーの原点といえる一冊。
(「BOOK」データベースより)
怪奇・幻想の色濃い8作の中短編を収録しているが、いずれも角川ホラー文庫「江戸川乱歩ベストセレクション」に収録済み。「人間椅子」「鏡地獄」はベストセレクション①、「人でなしの恋」「芋虫」「白昼夢」「踊る一寸法師」はベストセレクション②、「パノラマ島奇談」はベストセレクション⑥、「陰獣」はベストセレクション④で読むことができる。「傑作中の傑作、代表作中の代表作ばかりを集めた」というのも納得の内容で、ある意味で“ベストセレクションのベストセレクション”とも言えるだろう(刊行は本書の方が先だが)。
乱歩の代表作たる「人間椅子」「芋虫」を巻頭に置き、キレ味鋭い「白昼夢」「踊る一寸法師」を中ほどに、続けて読み応えのある中編2本で締めという完璧な構成。まぎれもない傑作揃いには違いないが、作品被りを気にする人なら本書をわざわざ買う意味は薄いかもしれない。ちなみに「芋虫」はベストセレクション版とは異なり、伏字無しのバージョンで収録されている。
★★★★☆(4.5)