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これぞ怪盗。名探偵・明智小五郎の二大ライバル怪人をカップリング-『黒蜥蜴と怪人二十面相』

『黒蜥蜴と怪人二十面相』

江戸川乱歩/2003年/ページ

乱歩の名作が、斬新かつダイナミックな切り口で現代に甦る!

乱歩世界を代表する二大アンチ・ヒーロー明智小五郎の好敵手が活躍する長編を一冊にカップリング!

人間の妄想が、いちばん怖い。 いまよみがえる、江戸川乱歩のめくるめく世界!
その美貌、そのズバ抜けたふるまい、底知れぬ贅沢、おびただしい宝石の装身具、そして左腕には黒蜥蜴の刺青―。暗黒街の女王が明智小五郎に挑戦状を叩きつけてきた!(「黒蜥蜴」) ロマノフ王家の大ダイヤモンドを近日中にちょうだいに参上する―。怪人二十面相から予告状が舞い込んだ。怪盗と名探偵、初めての対決!(「怪人二十面相」) 名探偵・明智小五郎の二大ライバルが夢のカップリング!江戸川乱歩のめくるめく世界が21世紀に蘇る!!

(Amazon解説文より)

 

 連続テレビドラマ「乱歩R」の放映に併せて編まれた、明智小五郎の二大ライバル怪人の活躍を収録した1冊。「黒蜥蜴」「怪人二十面相」、もちろん両作品とも「乱歩R」で映像化されているようだ。本書は現在、ホラー文庫ではない普通の角川文庫で刊行されている。

 「黒蜥蜴」は後に江戸川乱歩ベストセレクションにも収録されている。中盤以降はややダレる部分もあるものの、今なお強烈な黒蜥蜴のキャラクター性は印象深い。と言うか、黒蜥蜴の魅力だけで押し切ってしまっているような作品である。それだけスゲぇんだ、この怪盗は。

 「怪人二十面相」は角川ホラー文庫では初収録。改めて読むと、「犯行の前に予告状を出す」「芸術を愛し血を見ることは嫌い」「公衆の面前で探偵と堂々対面」といった、怪盗のパブリックイメージそのものな二十面相が逆に新鮮に思えてくるほど。思ってたより大活躍する小林少年や「探偵七つ道具」のワクワク感など、少年向けエンタメ作品としての完成度の高さにも舌を巻く。猟奇的な部分は少なく「黒蜥蜴」以上にホラーとは縁遠いが、基礎教養レベルで抑えておきたい作品である。

 両作品とも「悪人への変装を完璧にこなす明智」が印象的。悪人の心理と振る舞いを完璧に理解してエミュレートできるというのはなかなかに危ういが、それでいて絶対的に信頼がおけるヒーローである明智先生はやはり凄い。明智に成りすます二十面相が怪しさを隠しきれていないのとは対照的だ。

★★★(3.0)

 

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