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腐敗しない預言者の遺体と、不吉なる死の預言。精霊の地に渦巻く陰謀を暴け-『バチカン奇跡調査官 サタンの裁き』

『バチカン奇跡調査官 サタンの裁き』

藤木稟/2011年/352ページ

美貌の科学者・平賀と、古文書と暗号解読のエキスパート・ロベルトは、バチカンの『奇跡調査官』。2人が今回挑むのは、1年半前に死んだ預言者の、腐敗しない死体の謎。早速アフリカのソフマ共和国に赴いた2人は、現地の呪術的な儀式で女が殺された現場に遭遇する。不穏な空気の中、さらに亡き預言者が、ロベルトの来訪とその死を預言していたことも分かり!?「私が貴方を死なせなどしません」天才神父コンビの事件簿、第2弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 今回の奇跡調査はアフリカ小国の教会の、腐らない遺体の預言者に関するもの。1年半前に死んだヨハネ・ジョーダンは高温多湿の環境に安置されても腐敗する兆候を見せず、死後硬直もしていなかった。また、ヨハネは様々な預言を的中させていた。その中には「神の玉座より二人の使者が来るだろう」という、ロベルトと平賀の来訪について触れたと思われるものもあった。また、「一人の使者は不信心ゆえに、年老いた蛇の悪魔の罠にはまって命を落とすだろう」との記述も…。

 平賀はヨハネの遺体をあらゆる手段で調査するが、腐敗しない謎を明らかにすることはできなかった。一方、ロベルトは何かに取り憑かれたかのように教会の古文書を読み漁り、平賀に対する受け答えもどこか虚ろなものになっていた。本当にロベルトは悪魔に魅入られてしまったのだろうか? そして堕ちた蛇の精霊・クンカバを称えるというシンシンの祭りの日、ロベルトは毒蛇に咬まれて昏睡する。クンカバに仕える魔術師が、不吉な預言を実行しようとしているのだろうか…?

 

 前巻『黒の学院』では平賀の保護者のような立場で、やや大人しめだったロベルトだが今巻では大活躍。彼も平賀と別ベクトルでやべー奴であることが明らかになる。今回は「預言の謎」と「腐らない死体の謎」の2つが大きなトリックになっており、後者のタネ明かしやこれらの謎を解く過程で明らかになるヨハネの正体などはけっこうトンデモな内容。とは言え、お互いの強みを活かしつつ謎を解いていく神父コンビの良さが全面に溢れており、前巻と比べて構成もスッキリしておりたいへん読みやすい。サブタイ通りの「サタンの裁き」シーンで顔を見せた悪魔や、再登場を予感させる人物の動向も気になるし、シリーズもののミステリとしては文句のない一冊である。

★★★★(4.0)

 

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