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首切り道化師の伝説と、教会で起きる奇跡が超アクロバティックに結びつく!-『バチカン奇跡調査官 闇の黄金』

『バチカン奇跡調査官 闇の黄金』

藤木稟/2011年/320ページ

イタリアの小村の教会から申告された『奇跡』の調査に赴いた美貌の天才科学者・平賀と、古文書・暗号解読のエキスパート、ロベルト。彼らがそこで遭遇したのは、教会に角笛が鳴り響き虹色の光に包まれる不可思議な『奇跡』。だが、教会の司祭は何かを隠すような不自然な態度で、2人は不審に思う。やがてこの教会で死体が発見されて―!?『首切り道化師』の伝説が残るこの村に秘められた謎とは!?天才神父コンビの事件簿、第3弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 今回の奇跡調査の舞台はイタリアの田舎町。教会で角笛のような音が鳴り響き、イエスの像が肌を取り戻し、人々は光に包まれた光景を見る――。平賀もロベルトも奇跡を目の当たりにし、今回は本物の奇跡ではないかという雰囲気になるのだが、そんな折、教会でアルビノの少年の死体が発見される。さらにエクソシストの神父が行方をくらませたうえ、真冬でもないのに農家の牛小屋で凍死するという奇妙な事態も…。すべてを結び付けるのはこの地方に残る「首切り道化師」の伝説と、30年以上前に起きたある事件だった。

 相変わらずの圧倒的なディティールの細やかさに、主役の神父コンビの対比的なキャラ立ての巧みさ、予想もつかない奇跡のトリックが楽しい好シリーズである。今回の真相はあまりに壮大過ぎるというか荒唐無稽な気もするが、そういうはっちゃけぶりも含めて本シリーズの特徴なのかもしれない。どちらかと言うと中盤以降のスムーズ過ぎる展開はホラー感が薄く、そこが少々不満ではある。前作に出てきたジュリア神父(今回の表紙)も重要な役どころで登場するが、今後も絶対宿命のアレ的なアレになる感じで期待が持てる。

★★★☆(3.5)

 

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