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夫婦間の歪んだ愛情を煽情的に描く短編集。エロ無し回のほうが面白いかも-『甘い監獄』

『甘い監獄』

大石圭/2014年/320ページ

お見合いで知った双葉に惹かれる慶太。双葉によって嗜虐性に目覚めた慶太は、出会った日から彼女に陵辱の限りを尽くす。結婚して2ヶ月後、その夜がくるまでは…(「いじめたくなる女」)。「夫婦交換をしてみない?」結婚して十年。洋一郎は妻・静枝からスワッピングの提案を受ける。嫌なら離婚するという静枝に引きずられるようにホテルに向かった洋一郎が経験したこととは…(「他人の妻、他人の夫」)。夫婦という形の愛と狂気!

(「BOOK」データベースより)

 

 夫婦間の歪んだ愛をテーマにした短編集。大石圭作品にはよくあることだが、まったくもってホラーではない。4編中3編はエロチックな描写も多く、電車内で読むには適さない1冊。

 

 「いじめたくなる女」-穏やかな人格者である主人公だったが、見合い相手の気弱な女性を見ているうちにサド心がむくむくと湧き上がってきてしまう。結婚後も縛ったりロウを垂らしたり尻に挿入したりしていたが、そんな暴虐ぶりがいつまでも続くわけはなく…。

 「愛されすぎた夫」-美容室にパートでやってきた主婦は、いつも夫の愚痴を垂らしていた。夫の「菊ちゃん」のあまりのダメっぷりに、客を交えての菊ちゃん談義はいつも大盛り上がり、店の売り上げにも大いに貢献する。そんなある日、当の菊ちゃんが美容室にやってきて…。

 「妻への疑念」-「あなたの妻は貞淑そうな振りをしているが実際は不倫しまくってるし、アナルセックスもしている」という怪文書を受け取った夫。興信所に調べさせると浮気は事実であることが判明する。妻に詰め寄るとあっさり認めたあげく、妊娠しないようアナルセックスをしていたことがわかり、夫は怒りのアナルセックスで妻に仕置きをするのであった。東西アナルセックス対決の結末やいかに。

 「他人の妻、他人の夫」-美人の妻から「スワッピングしないと離婚する」と言われ、しぶしぶ納得した夫。スワッピング相手の夫は爽やかかつ筋肉質で高収入のイケメンであり、惨めさのあまり相手の妻にイマラチオをかます夫だったが、けっこうよかったので夫婦円満になった。

 

 オチらしいオチがあるのは「いじめたくなる女」くらいのもので、SMプレイ描写もワンパターンな印象は否めないが、エロ描写のない「愛されすぎた夫」はなかなか面白い。あまりにもダメ過ぎる夫になんだかんだ言いながら尽くす妻、傍から見れば奇妙でしかない関係性だが、‟家庭”というある種の監獄の中ではその奇妙さに気づかないことも珍しくない。

★★☆(2.5)

 

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