『歪つ火』
三浦晴海/2024年/336ページ
キャンプ場から出られなくなる未知の恐怖。戦慄のキャンプホラー!
辛い日常から逃れようと、私は一人でキャンプにやってきた。テントを張り、のんびりご飯を作る。夜はキャンプファイヤーを囲みながら、今日知り合ったばかりの人たちと語り合う。来て良かった。でも、次の日、私はなぜかキャンプ場から出られなくなっていた。しかも、昨夜語り合った人たちは皆、時間がリセットされたかのように「初めまして」と微笑み、昨日とまったく同じ言動を繰り返している。「あなた、大丈夫?」、困惑する私を訝しがる彼らの視線で私は確信した。「ここにいてはいけない、これはダメなやつだ」
非日常に囚われる未体験の恐怖を描く、戦慄のキャンプホラー。
(Amazon解説文より)
ソロキャンプにやって来た主人公。同じキャンプ場の客たちとキャンプファイヤーを囲んで語り合い、翌日起きたら自分以外のすべての人たちの記憶が消えていた。しかも、外に出ようとしても同じ場所に戻ってきてしまう。このキャンプ場では何かが起きている…! というお話。タイムリープものではなく、人々の記憶以外のもの(使った薪など)はリセットされていないのだが不可解な事態には間違いない。
自分以外の誰も信じられない、いや自分自身さえ信じられない…というシチュエーションがうまく描かれており、一気に読み進んでしまう。リアルなカカシが並び立つキャンプ場も、どこか癖のありそうなキャンパーたちも押し並べて怪しいのがイイですね。明かされる真相もわりと納得のいくものとなっており、安心して読めるA級のB級ホラーといった趣き。
中盤から「主人公はすでに●●●いるのではないか?」という疑問が頭から離れなかったが、実際はそんな予定調和よりもさらに後味の悪いラストになっているのでごあんしんください。あらゆるホラー作品のサバイバーの心境を代弁するかのような、主人公の最後の独白は印象深い。
★★★☆(3.5)