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科学と伝承調査で吸血鬼の正体を暴く! 大安定のエンタメホラーミステリ-『バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架』

『バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架』

藤木稟/2011年/448ページ

英国での奇跡調査からの帰り、ホールデングスという田舎町に滞在することになった平賀とロベルト。ファイロン公爵領であるその町には、黒髪に赤い瞳の、美貌の吸血鬼の噂が流れていた。実際にロベルトは、血を吸われて死んだ女性が息を吹き返した現場に遭遇する。屍体は伝説通り、吸血鬼となって蘇ったのか。さらに町では、吸血鬼に襲われた人間が次々と現れて…!?『屍者の王』の謎に2人が挑む、天才神父コンビの事件簿、第5弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 奇跡調査から帰る途中、事故に遭ってしまった平賀とロベルトは英国の田舎町ホールデングスに滞在することに。かのブラム・ストーカー(『吸血鬼ドラキュラ』の作者)も訪れていたこの地では、吸血鬼の仕業としか思えない殺人事件が多発していた。黒いマントに燕尾服、壁や天井に軽々と張り付き、犠牲者の首筋から血を抜き取る異形の襲撃者。その正体は本物の吸血鬼なのか? 平賀とロベルトはルーマニアから来たという吸血鬼研究家、タリチャアヌ教授とともに事件を調査するが、犠牲者は次々と増えていく…!

 

 いつもの奇跡調査とはやや異なるアプローチで、おなじみのふたりが吸血鬼の正体に挑む。プロローグの時点でホールデングスの領主・エルトン伯爵と吸血鬼の王・アダルバードとの主従関係が描かれているので「もう正体割れてるやん」と思うかもしれないが、さにあらず。示唆される‟複数の吸血鬼”の存在、かのブラム・ストーカーの真実、古代ケルト人の伝承など、次々と新たな謎が現れ、ラストには見事な決着を見せる。すべての謎が明かされてなお「もしかすると…」と思わせるホラー的なオチも良い。お手本のようなエンタメホラーミステリである。

★★★★(4.0)

 

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