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今さら感が無くも無いが、色褪せぬ名作ぞろい。人間椅子のオチは何度読んでもヒドい-『人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション①』

『人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション①』

江戸川乱歩/2008年/213ページ

貧しい椅子職人は、世にも醜い容貌のせいで、常に孤独だった。惨めな日々の中で思いつめた男は、納品前の大きな肘掛椅子の中に身を潜める。その椅子は、若く美しい夫人の住む立派な屋敷に運び込まれ…。椅子の皮一枚を隔てた、女体の感触に溺れる男の偏執的な愛を描く表題作ほか、乱歩自身が代表作と認める怪奇浪漫文学の作品「押絵と旅する男」など、傑作中の傑作を収録するベストセレクション第1弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 「人間椅子」「目羅博士の不思議な犯罪」「断崖」「妻に失恋した男」「お政登場」「二癈人」「鏡地獄」「押絵と旅する男」を収録。江戸川乱歩の短編集はいろんなレーベルから山のように出ているし(というか、角川ホラー文庫でも『鏡地獄』『暗黒星』などがとうの昔に出ている)、今さらなぁという思いがなくもなかったのだが、改めて読めばやはり面白いのである。「そうはならんやろ」という要ツッコミ展開もねじ伏せる、圧倒的なビジュアルイメージはやはり乱歩ならではのものだ。しかし「人間椅子」のオチ、個人的には普通にヒドいだと思うのだが、その滑りっぷりも含めて「らしい」感じすらしてくるし、かえって深読みできなくもないので、あれはやはり最低かつ最良のオチなのだろう。

 解説では、大槻ケンヂが乱歩作品の魅力の1つとして「イラストレーションとのマッチングの妙」をあげている。本ベストセレクションの表紙は、角川ホラー文庫20周年記念新装バージョン(現在Amazon等で表示されているのがそれ)と、漫画家の田島昭宇が手掛けたものの2バージョンがあるが、個人的には後者のほうがぶっちぎりで好み。

★★★★(4.0)

 

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