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原作とはまったく異なるテレビ版。展開は悪くないが間延び感アリ-『着信アリ テレビドラマ版』

『着信アリ テレビドラマ版』

大石哲也/高山直也(脚本)、蒔田陽平(ノベライズ)、秋元康(原作)/2005年/302ページ

未来の自分から、携帯電話に「死の着信」を受けた人間が、次々と死亡するという怪事件が発生する。その謎を追う雑誌記者・由美は、自分の母校である女子高の「生け贄伝説」と、11年前の「山岳遭難事件」が関係していることに気付く。背後に隠れている秘密とは?すべては死者の呪い…!?大ヒットシリーズ初のTVドラマ化。驚愕のラストまで完全ノベライズ。

(「BOOK」データベースより)

 

 テレビドラマ版の全10話を、各話ごとに10章でノベライズ。ドラマ版は原作の『着信アリ』とは、主人公の名前が同じだけで、それ以外の登場人物も話の展開もまったく異なる。ちなみに数少ない原作と共通するシチュエーションは「死の着信を受けた人物の予告時刻の瞬間をテレビで生中継し、霊能者と対決させる」という悪趣味な部分くらいだが、この部分の面白さは原作のほうがはるかに上だと思う。

 このノベライズ版は、原作の難点である「説得力の無い怨霊の恨みの動機」「句点ごとに段落が変わるヘンな文章」が解消されている。ただテレビドラマという形態ゆえか、「死の着信を偽装した犯罪者の仕業」という展開が何度も続くのは既視感が強いし、人が何人も死んでいるのに「今はまだ話すべき時ではない」と重要情報を話さないパターンにも(お約束とは言え)イライラさせられる。テンポよく読める一方で間延び感があると言うか…。作品の大きな謎の1つである「山岳遭難事件」の真相が解決したあとの展開も蛇足感が強い。原作を惰性で追っかけてきた人向けのヒマ潰し本。

★★☆(2.5)

 

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