『四隅の魔 死相学探偵2』
三津田信三/2009年/352ページ
城北大学に編入して“月光荘”の寮生となった入埜転子は、怪談会の主催をメインとするサークル“百怪倶楽部”に入部した。怪談に興味のない転子だったが寮長の戸村が部長を兼ねており居心地は良かった。だが、寮の地下室で行なわれた儀式“四隅の間”の最中に部員の一人が突然死をとげ、不気味な黒い女が現れるようになって…。転子から相談を受けた弦矢俊一郎が、忌まわしき死の連鎖に挑む!大好評のシリーズ第2弾。
(「BOOK」データベースより)
城北大学の編入してきた入埜転子は、入部したオカルトサークル「百怪倶楽部」で「四隅の間」の儀式に参加することになる。真っ暗な部屋の四隅に4人が立ち、別のもう1人が隅から隅へと移動して立っている人間にタッチ。触られた人間は壁沿いに別の隅へ移動して別の人にタッチ、とリレーのように移動を続けていく。儀式が進んだら、最初に決められたひとりが部屋の中央へ移動する。普通ならリレーは途切れてしまうはずだが、儀式が成功すれば「6人目」がいつの間にか現れ、リレーはずっと続くのだという…。
四隅の間の儀式は百怪倶楽部の部長・戸村茂の発案だった。学校の寮の地下室で儀式を行うと聞いたとたん、倶楽部のメンバーである転子の同級生・今川姫、先輩の沢中加夏は明らかに動揺した様子だったが、その理由は転子にはわからなかった。そして当日。戸村、副部長の田崎健太郎、姫、加夏、転子の5人は地下室で儀式を開始する。五感のほとんどを覆いつくす圧倒的な闇に怯えつつも、隅から隅へとリレーを続ける転子。すでに自分がどこを歩いているかもわからなくなっていたが、ふと室内の空気が変わる。自分は加夏にタッチしていたはずだが、今の感触はこれまでと違う…? 違和感を覚えたその時、部屋の真ん中から声が聞こえた。——「たどさいこのうらみをはらしてください」。次の瞬間、苦し気な呻き声とともに、誰かが倒れる音が響き…。
その日から、百怪倶楽部のメンバーの周りで謎の「黒い女」の姿が見られるようになる。そして相次ぐ怪死事件。事件はかつて倶楽部に所属していたという‟田土才子”の恨みによるものなのか? 転子は死相学探偵こと弦矢俊一郎の元を訪れる。転子にはっきりとした死相を見た俊一郎だが、彼女の同行人を見てとある違和感を覚える…。
「四隅の間」はスクエアとも呼ばれる交霊術の一種で、雪山の怪談などでよく聞くパターンのアレなので知名度は高いだろう。本書の前半は「四隅の間」の儀式を行ったオカルトサークルに起きる怪異を描いており、主人公の弦矢俊一郎の登場は後半からになる。
白眉はやはり、暗闇に覆われた部屋の中で行われる「四隅の間」の描写。映像では描き得ない、小説ならではの恐怖追体験である。今回もオカルト要素はあるがかなりフェアな部類のミステリであり、豊富にヒントが散りばめられているので真犯人当てに挑んでみるといいだろう。いつの間にか最低限の社交術を身に着けた俊一郎、相変わらず頼りになり過ぎる祖母、不思議な同居猫<僕>の活躍、早くもデレの片鱗を見せ始めている曲矢警部と、キャラの描写は大変よい。余談だが「城北大学」は、城南大学と並んで「仮面ライダー」などの特撮シリーズによく出てくる架空の大学である。
★★★(3.0)