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幽霊屋敷の交霊会調査のはずが、オカルトSFの全開の壮大なる野望にたどり着く!-『バチカン奇跡調査官 ラプラスの悪魔』

『バチカン奇跡調査官 ラプラスの悪魔』

藤木稟/2012年/416ページ

アメリカ次期大統領候補の若き議員が、教会で眩い光に打たれ謎の死をとげた。議員には死霊が憑いていたとの話もあり、事態を重く見た政府はバチカンに調査を依頼。平賀とロベルトは、旧知のFBI捜査官ビル・サスキンスと共に、悪霊を閉じ込めているという噂のゴーストハウスに潜入する。そこでは、政財界の要人しか参加できない秘密の降霊会が開かれていて、さらに驚愕の事件が発生する。天才神父コンビの事件簿、第6弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 共和党の大統領候補、エドモンド・マリニーが教会で聖体拝受のさなか、まばゆい光に包まれ心臓だけが爆発するという怪死を遂げる。マリニー議員には悪霊が憑いていたとの噂があり、死の5日前に参加した交霊会と関係している可能性があるという。

 デンバーの「ゴーストハウス」で行われた交霊会を調査してほしいという依頼を受けた平賀とロベルトは、FBI捜査官のビル・サスキンスとともに件の交霊会に潜入する。無数の部屋が立ち並ぶ奇怪な屋敷で彼らが体験したのは、懐かしい人の声、幻、エクトプラズムといったいかにも交霊会らしい出来事の数々。ついには目の前で人が消えてしまうという超常現象まで…。

 数々のオカルト現象を目の当たりにした平賀とロベルトは、ビル捜査官の実家に身を寄せつつ調査を進めていく。だがマリニー議員に聖体拝受を行った司祭も、平賀たちの目の前で光に包まれ、心臓が爆発して死亡しまう。これは神の裁きか、悪魔の仕業なのか。一連の事件の裏には、意外なある天才科学者の姿が…?

 

 過去作品で何度か登場していたビル捜査官が活躍する巻。実質的に本巻のサブ主人公と言ってもいいほどである。今回はいつもの奇跡調査とは異なり、交霊会で起きた心霊現象と、謎の怪死事件の謎を追っていくことになる。意外なほど親しみやすいビル捜査官、なんだか曲者の女性科学者・ウオーカー博士がなかなか魅力的。ストーリーも有名な都市伝説「フィラデルフィア計画」に加えてニコラ・テスラにエジソン、果てはアインシュタインといった科学者たちの姿も見え隠れし、実に壮大なオカルトSF大系といった感がある。ラストの不穏な引きもお見事。シリーズの中でも快作ではなかろうか。

★★★★(4.0)

 

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