『十二の贄 死相学探偵5』
三津田信三/2015年/384ページ
中学生の悠真は、莫大な資産を持つ大面グループの総帥・幸子に引き取られた。7人の異母兄姉と5人の叔父・叔母との同居生活は平和に営まれたが、幸子が死亡し、不可解な遺言状が見つかって状況は一変する。遺産相続人13人の生死によって、遺産の取り分が増減するというのだ。しかも早速、事件は起きた。依頼を受けた俊一郎は死相を手掛かりに解決を目指すが、次々と犠牲者が出てしまいー。大好評シリーズ第5弾!!
(「BOOK」データベースより)
莫大な資産を持つ大面グループの総帥・幸子が大往生する。幸子は遺された大面一族に向け、非常に奇妙な遺言状を残していた。弁護士・久能のもとに集まったのは、まず幸子に引き取られたばかりの中学生・悠真。彼の異母兄姉である休学中の大学生・啓太、占い好きの美咲紀、保育士の資格を持つ真理亜、手品好きの博典、双子のようにそっくりな華音と莉音、悠真を目の敵にしている将司の7人。そして血のつながらない叔父と叔母たち、悠真の世話を焼きたがる初香、作家志望の太津朗、看護師の資格を持つ真理子、庭いじりが好きな早百合、一族の跡を継ぐ気でいる安正。以上の13人である。13人のうち悠真は生まれた月日がわからず、残りの12人はそれぞれ生まれの12星座が異なっていた。
遺言状には「全遺産の半分は、悠真が継ぐこと」と書かれていた。悠真が死んだ場合、彼が継ぐはずだった遺産は大面グループが管理する。悠真以外の12人のうち誰かが死んだ場合、黄道十二宮のホロスコープにあてはめ、まず死んだ星座から反時計周りに120度と240度の位置にいる星座の人物に、故人の遺産の半分がそれぞれ手に入る。また90度と180度の位置にいる人物も、遺産の半分をそれぞれ120度と240度の位置にいる人物に渡さなければならない。そして悠真が死んでいた場合、90度と120度、180度と240度の位置にいる人物の立場が逆転する。つまり120度の人物が90度の人物に、240度の人物が120度の人物に財産を与えなければならない。幸子の四十九日が終わる前に誰かが死亡した場合、悠真が継ぐはずだった遺産のうち6分の1も、ホロスコープ間の遺産のやり取りに加えられる。悠真以外の12人が全員死亡した場合、すべての遺産は悠真が継ぐ。四十九日が終わるまでに屋敷を出て、丸一日留守にしたものはいっさいの相続権を失う。
さあ。完全にわからなくなってきました。さらに、お互いに関心の薄い大面家の一族は、自分以外の誰が何座なのかを把握していない。これは完全に、一族間での殺し合いを推奨しているかのような遺言ではないか。そして四十九日が終わらないうちに一族のひとりが怪死。異変を感じた弁護士の久能は、死相学探偵こと弦矢俊一郎のもとを訪れる…。
今回は「いくらなんでもやり過ぎ」レベルの遺産分配デスゲームのお話。煮詰まり過ぎた30巻目あたりの能力バトル漫画を読んでいるかのような奇妙な遺言状が出てくるが、正直この辺は「全員に動機がある」というところだけわかっていればOK。
<僕にゃん>も含めたレギュラー陣の活躍は楽しく、叙述トリックも見事。ホラー的には悠真が遺言状を取りに行くために、不気味な墓所をひとり進んでいく序盤の雰囲気がとても良い。ただ今回はギミックに凝っているせいか、その他のホラー描写や真相が物足りなく感じてしまう。
★★★(3.0)