角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

パーツを剥ぎ取り理想の女体を造る外法、‟六蠱の軀”を行う猟奇犯を追え!-『死相学探偵3 六蠱の軀』

『死相学探偵3 六蠱の軀』

三津田信三/2010年/304ページ

志津香はマスコミに勤めるOL。顔立ちは普通だが「美乳」の持ち主だ。最近会社からの帰宅途中に、薄気味悪い視線を感じるようになった。振り向いても、怪しい人は誰もいない。折しも東京で猟奇殺人事件が立て続けにおきる。被害者はどちらも女性だった。帰り道で不安に駆られる志津香が見たものとは…?死相学探偵弦矢俊一郎は、曲矢刑事からの依頼を受け、事件の裏にひそむ謎に迫る。注目の人気シリーズ第3弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 女性の身体の皮膚を剥ぐ、一部を残しその他の部分を焼くといった連続猟奇殺人事件が発生。その様はまるで呪術めいた儀式のようだった。曲矢警部は過去に2度にわたり、自分の目の前でオカルトじみた事件を解決した弦矢俊一郎に協力をあおぐ。自分は死相学探偵でありオカルト探偵ではないとぼやきつつも、依頼を引き受ける俊一郎。

 猟奇殺人事件はなおも続き、「六蠱」を名乗る犯人はインターネットで声明を発表する。すでに私は両腕と胸部を手に入れた。残りの頭部、下腹部、両脚を手に入れ、5つの部位が揃ったところでとある身体に移し替える。これこそが「六蠱の軀」である。世の女性たちよ、私のためにあなたの優秀な部位を提供してほしい。連続殺人鬼からのおぞましいメッセージは日本中をパニックに陥れる…。

 犯人を追う曲矢と俊一郎。彼らをサポートするミステリマニアの新恒警部。同僚の当山志津香を六蠱に殺害された大島夕里と、その先輩の多崎大介。六蠱に襲われるも唯一、その魔の手を逃れた岩野奈那江。恋人の仇を取るため休職し、独自の捜査を始めた警察官・浦根保。それぞれが六蠱の足取りを追うも、殺人の連鎖は止まらない。俊一郎が見た、夕里と奈那江に浮かぶ死相も消える様子がなかった。行き詰まる捜査。だが改めて関係者から事情を聞いた俊一郎は、六蠱の‟真の目的”に気づくのだった…!

 

 前作ほど歪な構成ではないが、今回も俊一郎自身より他の登場人物の捜査パートが多め。とは言え多彩な登場人物のおかげで深みが増しており、退屈さは無い。最後の最後までなかなか尻尾を見せない真犯人の、日本全体を騒がす大胆不敵な犯行は江戸川乱歩チックでたいへん楽しい。六蠱の陰でちらつく黒幕「黒術師」の姿、相棒としてのいい味が出てきた曲矢警部、ただものではない風格を漂わす俊一郎の飼い猫<僕にゃん>など、シリーズならではの読みどころも多い。快作である。

★★★★(4.0)

 

www.amazon.co.jp