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5つの凶器が巻き起こすホラー芸術展の惨劇。犯人当てはシリーズ最難級!-『五骨の刃 死相学探偵4』

『五骨の刃 死相学探偵4』

三津田信三/2014年/336ページ

怖いもの好きの管徳代と峰岸柚璃亜は、惨劇の現場“無辺館”に忍び込む。そこは約半年前に、5種類の凶器による残忍な無差別連続殺人事件が起こった場所だった。館で2人を襲う、暗闇からの視線、意味不明の囁き、跟いてくる気配。死相が視える探偵・弦矢俊一郎に身も凍る体験を語る彼女には、禍々しい死相が浮かんでいた。俊一郎は真相解明に乗り出すが、無辺館事件の関係者から新たな死者が出て!?大人気シリーズ第4弾!!

(「BOOK」データベースより)

 

 ホラー関係者を集めて行われた芸術展〈恐怖の表現〉の開催中、死亡者4人、瀕死の重傷者1人という惨劇が起きた洋館‟無辺館”。犠牲者の中には新進気鋭のホラー作家・宵之宮塁、著名なホラー監督・佐官甲子郎の妻、佐官奈那子の名前もあった。無差別連続殺人の犯人はいまだ捕まらず、無辺館は廃墟同然と化していた…。

 ホラー好きの管徳代(ヨーコ)と峰岸柚璃亜は、無辺館の管理会社の役員・長谷川要人、その友人の湯浅博之とともに無辺館へと入り込むが、無数の怪奇現象に襲われる。不安を覚えた徳代と峰岸柚璃亜は死相学探偵・弦矢俊一郎のもとを訪れるが、徳代にははっきりとした死相が現れていたのだった。

 連続殺人事件の犯人は第一の剣、第二の鎌、第三の斧、第四の槍、第五の鋸という5つの凶器を持ち込んでいた。動物の骨で作られた「五骨の刃」に呪術的なものを感じた警察上層部は、俊一郎に事件の関係者の死視を依頼する。佐官甲子郎監督の親友・石堂誠が奇妙な死を遂げたため、呪殺による「第二の連続殺人」が起きることを危惧したのだ。合同慰霊祭で100人以上もの人間の死視を行った結果、新たな死相が現れた人間が次々と見つかる。第一の事件でからくも生き延びた運送会社の社員・出口秋生。宵之宮塁の担当編集者だった茶木笙子。特殊造形クリエーターの鈴木健児。そして佐官甲子郎監督。そして金融庁の役人・大林脩三は慰霊祭の最中に心臓マヒでこの世を去った。死相が見える人々には何らかの共通点があったのだろうか? 俊一郎は佐官監督の娘・佐官美羽、出口の後輩・大橋明、石堂誠の妹・石堂葉月、鈴木健児の姉・井東佐江といった関係者たちをピックアップする。そしてリストを見ながら「関係者が多すぎる…」と今さらながら思うのだった。

 

 今回の真相は「そっち!?」と呆気にとられるような少々アレな印象も受けてしまうが、関係者=容疑者の数が過去最大級であり難度は高い。というかわかんねーよ。確かな成長を見せる俊一郎、急にヒロイン感とともに登場した曲矢警部の妹、ただ者ならざる雰囲気を隠さなくなってきた僕にゃんとシリーズならではの見どころは多いし、〈恐怖の表現〉展の悪趣味すぎる展示、佐官監督のB級感が拭えないフィルモグラフィーといったディテール部分は相変わらず楽しく読める。

★★★☆(3.5)

 

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