『ずうのめ人形』
澤村伊智/2018年/464ページ
不審死を遂げたライターが遺した謎の原稿。オカルト雑誌で働く藤間は後輩の岩田からそれを託され、作中の都市伝説「ずうのめ人形」に心惹かれていく。そんな中「早く原稿を読み終えてくれ」と催促してきた岩田が、変死体となって発見される。その直後から、藤間の周辺に現れるようになった喪服の人形。一連の事件と原稿との関連を疑った藤間は、先輩ライターの野崎と彼の婚約者である霊能者・比嘉真琴に助けを求めるが―!?
(「BOOK」データベースより)
都市伝説「ずうのめ人形」。その話を聞いた者の前には喪服姿の日本人形が現れ、四日後にはみな死んでしまうという…。本作では、この都市伝説の呪いに巻き込まれたオカルト雑誌の編集者やライターが「ずうのめ人形」の正体を探る過程と、都市伝説の書かれた小説の内容が並行して描かれている。
ずいぶんストレートな呪いというか、ぶっちゃけ『リング』に近く、本書でも様々なホラー作品に加え『リング』についてはことさら詳らかに書かれている。手の内を明かすことでこの有名過ぎる元ネタに対して真正面から挑んでやるという作者の意志が感じられるかのようだ。実際、本書で得られる興奮は『リング』とは性質が異なり、序盤で感じた違和感や理解不能なパートの真実が後半で明らかになったり、トリックに見事に騙されていたことが分かったりといったミステリ的な要素が強い。「第三章 ユカリ」以降は怒涛の「そうだったのか!」の連続で、顔に巻き付けられていた糸がほどけていくかのような気持ちよさである。
ミステリ的な鮮やかさだけでなく、ホラーとしての見どころももちろん盛りだくさんだ。歪んだ社会そのものの怖さ、歪んだ個人の自覚的あるいは無自覚的な悪意の怖さを鋭く切り取る様は実に作者らしいし、ホラーを愛し、ホラーを友とする登場人物たちの活躍、そして受難も感情移入必至である。でも黒幕の動機はさすがにやり過ぎだよ!
★★★★★(5.0)