角川ホラー文庫全部読む

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死者との交霊という正統派テーマ。読ませる力作だが恐怖・絶望感は薄め‐『ゴーストシステム』/『禁忌装置』

『ゴーストシステム』

長江俊和/2002年/349ページ

クラスでいじめられていた女子高校生・津田楓に、毎日繰り返し、アドレスを変えても送られてくる携帯電話のメール。そのメールとは受け取った人が自殺していくという噂のメールだった。そして同級生の希美が自殺してしまう。その携帯画面には、楓に送られてくるのと同じメールが…。都市伝説的霊現象ホラー。

(「BOOK」データベースより)

 

『禁忌装置』

長江俊和/2018年/304ページ

受け取った人が次々と謎の自殺を遂げるというメールが高校2年生の津田楓のもとに届いた。直後に親友・希美が投身自殺を図る。血を流して倒れる希美の手には、件のメールが表示された携帯が握られていた。一連の自殺に興味を持ったテレビディレクターの岡崎零子は、ニュース番組の特集企画として取材を始める。やがて、メールの数列は暗号であることがわかってきて―。大人気、「禁止」シリーズ著者の小説家デビュー作!

(「BOOK」データベースより)

 

 『禁忌装置』は『ゴーストシステム』を改題改訂したもの。ページ数を見れば分かる通り描写が省略されている箇所がところどころあり、だいぶ手を加えられている部分もあるが全体の流れはほぼ変わらず、章数も減ったりはしていない。今から読むのであれば『禁忌装置』で問題ないだろう。

 オカルト関連では有名な「死者との交霊」ネタであり、システム/装置の正体もかなり初期から割れる。ルポルタージュ風の淡々とした描写に加え、「霊とは、死後の世界とは何か?」を考察していくというテーマ自体、あまり恐怖をあおらない内容ではある。ラストも読み手の不安を煽るほどのパワーはない。『放送禁止』シリーズのようなトリッキーな内容を期待しているとちょっと肩透かしかもしれないが、古典的ホラーの雰囲気が心地よい1冊。

★★★(3.0)

 

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