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ベストセレクションの名にふさわしい珠玉のセレクト。拾い物が必ず見つかる-『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』

『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』

朝宮運河・編/2021年/336ページ

1993年4月の創刊以来、わが国のホラー・エンターテインメントとともに歩んできた無二の文庫レーベル、角川ホラー文庫。その膨大な遺産の中から、時代を超えて読み継がれる名作を厳選収録したベストセレクションが登場。大学助教授の〈私〉が病院で知り合った美しい女性、由尹。ミステリアスな雰囲気をたたえた彼女は、自分の体は呪われていると告げる。ともに暮らし始めた二人だが、やがて悲劇的な事件に見舞われて……。ミステリとホラーの巨匠・綾辻行人90年代初頭に執筆した傑作「再生」をはじめ、『リング』の鈴木光司が東京湾のクルーズ船を舞台に戦慄の一夜を描いた「夢の島クルーズ」、故・今邑彩が角川ホラー文庫のために書き下ろした不穏な物件ホラー「鳥の巣」、の第72回日本推理作家協会賞に輝いた澤村伊智の学園ホラー「学校は死の匂い」など、バラエティ豊かに、ホラージャンルの面白さと可能性を示す全8編。最高にして最恐、これが日本のホラー小説だ。ホラー評論家・ライターの朝宮運河セレクション。

(Amazon紹介ページより)

 

 長編・中編のみならず、短編集が充実しているのも角川ホラー文庫の魅力。収録されている8編、どれも読んで損はしないと断言できる出来。ベストセレクションの名は伊達ではない。当然ながら熱心な角川ホラー文庫ファンなら既読の作品も多いだろうが、「面白い作品は何度読んでも面白い」ことを再確認できる一冊でもある。巻頭の「再生」は「これぞホラー!」と声高に宣言するかのようなおぞましい短編。あまりにもキレが良すぎるショートショート「よけいなものが」はもはや殿堂入りレベルだし、「依って件の如し」「学校は死の匂い」「ゾフィーの手袋」は作者のカラーが非常によく出ており、アンソロジーピースとしては鉄板。

 「よけいなものが」同様、本書のみならず様々なアンソロジーに収録されている「夢の島クルーズ」は読み返してみるとやはり凄まじく、個人的にもオールタイムベスト級の1編。主人公の視点からは怪異の正体はいっさい見えていないにも関わらず、猛烈に怖い。B級映画のようなシチュエーションを皮肉たっぷりに描く「五月の陥穽」、現実が怪異に侵食されるまでの流れの見事さに唸る「鳥の巣」は初見だがかなりの拾い物だった。

★★★★★(5.0)

 

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