角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。読んだ上で、おすすめしたい作品は全力で推します。

人々の恐怖を取り除き、救済もたらす穢れた天使。オカルトでバイオな超エンタメ-『天使の囀り』

『天使の囀り』

貴志裕介/2000年/526ページ

北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように、自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンで、いったい何が起きたのか?高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか?前人未到の恐怖が、あなたを襲う。

(「BOOK」データベースより)

 

 読み始めたらページをめくる手が止まらない、500ページ一気読み必至のエンタメ大作。人々を自殺に追いやる「天使の囀り」の正体とは? アマゾンの呪いか、未知のウイルスか、それとも本当に「天使」の導きなのか…? という謎を追うのが前半の展開。「囀り」の正体が明らかになる中盤以降は陰惨さもパワーアップ、「囀り」を世界に広めんとする団体の暗躍も描かれる。
 話の本筋からちょこっと離れたシーン――終末医療に関わる主人公の仕事ぶり、自己啓発セミナーのディスカッションなどは言うに及ばず、オタクが美少女恋愛シミュレーションを遊び始める場面ですら妙なリアリティがある。こうした描写がスパイスになって中だるみを感じさせないのだな、と構成に感心する。ちなみに全2巻のコミック版(画:貘九三口造)は上記の細かい描写はところどころ省略されているものの、本筋のストーリーはかなり忠実になぞっている。終盤のあの「大浴場」など、読者が画で見たい(or見たくない)であろうシーンもなかなかの迫力で描かれており、原作と漫画、どちらを先に読んでも楽しめるであろう出来。

★★★★★(5.0)