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逃れられない死の予告電話。生放送で呪殺シーンを全国中継するテレビマンの鑑!-『着信アリ』

『着信アリ』

秋元康/2003年/246ページ

由美が気乗りしないまま参加した合コンの席で、陽子の携帯電話が聞き覚えのない着信音で鳴った。液晶には「着信アリ」の文字。メッセージを確認すると、陽子の悲鳴のような叫び声が録音されていて、着信履歴には2日後の時刻と、発信元として陽子自身の携帯の番号が残されていた。そして、その2日後のその時刻。陽子はメッセージに残されたとおりの悲鳴をあげて不可解な死を遂げてしまう…。終わりのないチェーンホラーの誕生。

(「BOOK」データベースより)

 

 ああ『着信アリ』ね、一時期ゴリ押されてたから名前だけは聞いたことあるわ。秋元康ね、はいはい…と鼻をほじりながら読んだのだが、そう悪いものでもなかった。
 携帯電話に聞きなれない着信音が鳴り、「着信アリ」とメッセージが残される。確認してみれば時刻は数日先の未来、しかも自分自身の電話番号からかかってきたことになっている。そしてその内容は、着信を受けた被害者が死を迎える際の台詞や動画なのだった…という、都市怪談「メリーさん」の亜種のような話。というか『リング』もバリバリに意識しているような気がする。被害者は死後、口の中に飴玉が突っ込まれているというのが独自のポイントである(地味だが)。
 大方の予想通り、とある怨霊が一連の怪事件を起こしており、「着信」を受けてしまった主人公・由美と、妹を亡くした葬儀屋・弘が怨霊の正体を暴くためなんかいろいろやる…というのが話の本筋になる。とは言え、いちばん面白いのは同じく着信を受けた由美の友人・なつみがテレビディレクターに取っ捕まってしまい、死を予告された時間に生放送番組に出演させられてしまうシーン。インチキ臭い霊能者に除霊を受けるも当然役立たずであり、霊能者は護摩の火が燃え移り、なつみは生放送中に首が引きちぎれて予定通りに死亡し、ディレクターは高視聴率に満足しつつ窓から飛び降りる。面白過ぎない?
 悪霊の正体が深い恨みつらみとかでなく「自己顕示欲」と言うのは斬新と言えば斬新だが、あんまり恐ろしくない気もする。まあでも深いこと考えずに悪趣味な展開をニヤニヤ楽しむ分にはじゅうぶんな一冊です。

★★★(3.0)

 

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